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秘める聖女と優しき逃亡者  作者: 黒羽、冥月 霜華
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☆炎が消したモノと浮かび上がらせた疑問

 一人、二人とローザはレイピアで使用人達を刺していく。

 広間に漂う血の匂いは段々と濃くなり、逃げようとする使用人には容赦なく魔法を使い動きを封じる。


「なぜですか! ローザ様!」

「言ったでしょう? 王の命令ですわ」

「まさか、例の噂の……それならば、ロベール様は無じ……ぎゃぁぁっ!!」


 最後まで言葉を聞く事無く、ローザは残酷なまでに美しい笑みを浮かべたままレイピアを使用人に突き刺した。

 痛みであがる悲鳴が、更なる悲鳴を呼ぶ。

 しかし、その悲鳴が屋敷の外に出ることは無く、一つ、また一つと減っていく。

 ローザは自分に返り血がつかない様に注意しながら、レイピアを振るう。


 ヒュンッ!


 空を切り裂いた細身の剣は、魔力によって強化されている為か切れ味が鈍ることは無い。

 どうして? なぜ? という言葉が徐々に減り、代わりに血の匂いが濃くなっていく。

 最後の一人――執事長だった男に止めを刺すと、ローザは周囲を見渡し静かに屋敷を後にした。

 一度自分の屋敷に戻り、新しい皮鎧を身につけると急いで城へと向かう。

 プパッツォの側近へ自分が来た事を伝えて欲しいと告げた。

 側近は何事か訊ねることも無く、静かにその場を立ち去っていく。

 その背を見送ると、ローザは顔を伏せ、そっと目に力を入れた。


「カッツェ殿、こちらへ」

「はい」


 側近の一人に案内され、ローザはプパッツォの前に跪いた。


「どうした? ローザ」


 プパッツォの言葉に、ピクリと肩を振るわせたローザは、そのまま「ご命令通りに……」とだけ呟いた。

 その一言で全てを察したプパッツォは静かに「そうか」と呟くと、咳払いをし側近達を退室させる。

 玉座に座るプパッツォとローザだけになった部屋は、シンと静まり返り、なんとも言えない空気が漂う。


「……よい、家臣だと思っていたのだがな……ローザ」

「はい」

「お前は裏切ってくれるなよ?」

「勿論です」


 悲しげに顔を伏せるプパッツォに、ローザは無理矢理浮かべた涙が輝く瞳を向けて頷いた。

 口元が弧を描きそうになるのを必死に押えながら、ローザはプパッツォの言葉を待つ。

 その時――


「大変です!! ウォレス家が……ロベール様のお屋敷が燃えています!!」


 一人の兵士が部屋へと慌しく入り、そう叫んだ。


「どういう事ですの?」


 プパッツォが声を発するより早く、ローザがそう聞き返す。

 しかし、兵士もローザに指示を仰ごうと来ただけらしく、情報らしい情報は聞けない。

 ローザは苛立ちをどうにか押さえ込むとプパッツォに頭を下げ、兵士とともに部屋を後にする。


「(私は火を放っていない。あの中に、生き残りが居たという事ですの? まさか、ロベールが……? あの傷で生きているとは思えませんけれど……)王宮の魔術師に連絡し、炎の鎮火を。負傷者が居るかもしれませんので、治療師達と連携して下さい」

「はっ!」


 自分を追い抜き、走り去っていく兵士を見ながらローザも再び屋敷に向かう。

 風を使い空を飛び、屋敷の前に降り立つローザ。

 野次馬と化した人々をチラリと見ると、そのまま詠唱を始める。


「水の精霊よ。我が名の下に集い、炎を鎮めよ。(アックア)()(ムーロ)!」


 ローザの言葉によって、屋敷の周りを水の壁が覆っていく。


(アックア)()(ムーロ)で、消えない? という事は、魔法で呼び出された炎という事? やはりロベールは生きていますの?)


 浮かぶ疑問に、思わず顔を顰めるローザ。

 しかし、近づいてきた魔術師達の気配に気付き、なんとかいつもの表情を浮かべると魔法で呼ばれた炎であることを告げ、消火活動を始めさせた。

 魔術師達の働きにより、炎はすぐに消し止められ、兵士達が負傷者や死者がいないか確認し始める。

 ローザも屋敷の中に入るが、屋敷の中は激しい炎が上がったという事以外何も分からず、生き残りが居るのかどうかを知ることは出来なかった。

 ローザはひとまず兵士達に現場を任せると、城へと戻り、再びプパッツォの前に膝をつく。


「どうだった?」

「詳細は分かりませんが、炎は屋敷内部から放たれているようでした。もしかしたら、ロベール達の死を隠したいと思う人間の仕業かもしれません」

「他にも協力者……裏切り者が居るという事か?」

「可能性はあります。が、それが、我が国の者かどうかは……」

「そうか……」


 ローザの言葉に、プパッツォはハァッと息を吐く。


「お許しいただけるのならば、私が直接領土内を調べ、内通者が居ないか調査したく思います」

「そうか。しかし、お前が居なくなると色々と不都合もある。一度検討し、命を下すことにする」

「畏まりました」


 プパッツォの言葉にローザは深く一礼すると、部屋を後にする。

 その表情は、先程とは違い暗く不安げなものだった。

 そして、そこから数日後――カッツェ家は何者かの襲撃を受け、現当主を含めた多くの人間がその命を奪われた。

 生き残ったのはただ一人、現王族付魔法剣士 ローザ・カッツェ。

 事態を重く見たプパッツォは、彼女に一つの命を下したのだった。

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