★侵入者を知る
クロードは泣き止んだユリアを連れ、広間から自室へと移動した。クロードの部屋には物がほとんど置かれておらず殺風景だ。
窓際に置かれたソファに二人は隣り合って座った。
「……ユリア、お前を襲ったのはどんな奴だった?」
思い出させるのは酷だと思いながらもクロードは聞かずにはいられなかった。また襲われたら困るし、襲った相手の目的が何なのかも気になる。目的によっては、今後の対応も変わってくる。
「えっと、確か、昨日……クロードにぶつかった人だった……」
「なっ!?」
クロードはユリアの言葉に驚く。自分が探していた男がまさかここを襲いに来ていたなんて……思ってもいなかった。
(くそっ、オレがここに残っていれば……)
男の正体も目的も掴め、ユリアが襲われることもなかったかもしれないのに。クロードは無意識に拳を握り締める。爪が手のひらに食い込み僅かな痛みを与えているが、クロードはそれに気づいていない。
「……そういえば、その人、ウォレスのやつがいるんだろって聞いていたよ」
続いて発せられたユリアの言葉にクロードは混乱した。驚きと混乱で、握られていた拳は緩められていた。
何故、生きていることがばれたのか。何故、居場所がばれたのか。あのローザでさえ知らない自分の生存が、そして自分の居場所が。せっかく敬愛する兄、ロベールが安全を確保してくれたというのに。
それに、男性は何のために自分を探しているのか。あのローザに居場所が知られていないということは、男性は居場所をローザに知らせていないということ。なら目的はいったい何なのか。
「ねぇ、クロード。ウォレスってなに?」
ユリアが不思議そうな顔をして訊ねてくる。
クロードは何て答えるか迷った。自分の知ることを語るのか、それとも世間一般に知られていることを語るのか。
「ウォレスは……三週間くらい前に滅ぼされた家のことだ」
それ以上の情報をクロードは語れなかった。ウォレスについて知らないわけではない。むしろ今この世にいる誰よりもクロードはウォレスのことを知っているだろう。それでも語れなかった。いや、知っているからこそ、語れなかった。これ以上語ってしまうと私情が混ざりすぎて正しい情報にならなくなりそうだったのだ。
「……偽りの英雄が……!!」
苦しげに小さく呟かれたクロードの言葉。クロードは無意識のうちにその言葉を発していた。
その言葉は、ユリアに届いていた。しかし、ユリアがその意味を聞くことはなかった。その言葉を呟いたクロードの表情がとても苦しげだったから。きっとその言葉の意味を聞くとクロードを苦しめることになる。ユリアはそう悟ったのだ。




