☆彼女と彼の出会い
「この道を真っ直ぐ……ですか……」
少年と途中で別れたローザはそう呟くと目の前の道を見つめた。
石畳で舗装された道が続く先には、小さく屋敷が見える。
ローザは小さく息を吐くと、そのまま道を歩き始めた。
「馬を連れてくるべきでしたわね」
誰に言うでもなく、ローザはそう呟きながら歩を進める。
周囲は大きな木や小さな花が空を目指して伸び、ローザの足音と鳥のなく声だけが響く。
無言で歩き続けるローザの目の前に、重厚感のある屋敷が現れた。
「……地方領主にしては、良い屋敷に住んでいますのね」
ローザはそう呟くと、扉を叩く。
するとすぐに扉の向こうから声がし、小さいのぞき窓から老人が顔を出した。
ローザはにっこりと微笑み、一度頭を下げる。
老人は扉を叩いたのがローザだと分かると、慌てて扉を開けた。
「これはこれは……聖女様! どうなされたのですか?! このような地に……」
「突然すみません。王都にて起きた件で領主殿にお話がありましたの。いらっしゃいまして?」
ローザの言葉に、老人は困ったような表情を浮かべるとそのまま黙り込んでしまった。
老人の様子にローザはどうすべきか考え始めたその時――
「どうした?」
「あ、ラファール様!」
老人がホッとしたような声をあげ、声の主である男性――ラファールを見た。
それにつられる様に、ローザも少し離れた場所に立つラファールに視線を向ける。
「……失礼。現王族付き魔法剣士、ローザ・カッツェ様とお見受けいたします。このような辺境の地に聖女様がいらっしゃるとは、一体何が起きたのですか?」
物腰穏やかに訊ねるラファールに、ローザは一礼すると先程老人に話し事をもう一度口にした。
ラファールはローザの話を聞き終えると、一つ頷き、口を開く。
「聖女様。そのお話、私が一族を代表してお聞きいたします」
「貴方が?」
役不足だと言いたげなローザの瞳に、しっかりと頷くラファールの姿が映る。
(何かを企んでいそうですわね)
ラファールの瞳に映る光を見ながら、ローザは一人そう考える。
二人の間に挟まれた老人は、この事態をどうすべきなのか考えているのか、困惑した表情を浮かべたまま固まっていた。
「……分かりましたわ。えっと……」
「失礼しました。私はラファール・カルマと申します。ラファールとお呼び下さい」
「有難う御座います。私の事はローザと及び下さって、結構ですわ」
ラファールとローザは互いに微笑みあうと、握手を交わした。
その様子を見ていた老人は、すぐに使える部屋をラファールに伝え、ローザに頭を下げるとその場を離れる。
二人はそれを見ながら、老人の言っていた部屋へと向かうのだった。




