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脳筋詐欺にご注意ください  作者: tky@複数作品連載中


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第9話:中間考査と全教科満点の暴挙

第一学期の中間考査が始まった。


秀英学園の生徒たちがペンを握りしめて冷や汗を流す中、力也にとって高校レベルのテストなど準備運動にも満たなかった。


開始のチャイムが鳴ってからわずか十分で力也は全教科の解答欄を完璧に埋め尽くしていた。


(くくく、あまりにも簡単すぎる、これで満点を取って教師たちの度肝を抜いてやる)


力也は余った時間を持て余し机の下で密かにアイソメトリックス・トレーニングを開始した。


太ももに両手を押し当てて全力で反発させる静かなる筋肉の戦いである。


テスト監督の教師が怪訝な顔で力也を見ていたが不正行為には見えないため注意できずに困惑していた。


数日後、成績上位十名の名前が廊下に掲示される前日の放課後。


力也は掲示板に自分の名前が貼り出される前に職員室へと乗り込んだ。


「太田先生、少しよろしいですか」


「な、なんだい中山くん、テストはもう終わったよ」


担任の太田はメタボ腹を揺らしながらビクビクと振り返った。


力也は真剣な表情を作って太田の机に両手をついた。


「俺の脳細胞という名の筋肉が暴走して全教科で満点を取ってしまったようです」


「ええっ、どうして君が自分の点数を知っているんだ、というか脳細胞の筋肉ってなんだ」


「そこで提案なのですが、俺の名前を成績上位者の掲示から除外していただきたい」


太田は目を丸くして完全に思考を停止させた。


「待ってくれ、君が全教科満点のトップだというのは事実だが、除外する理由がないじゃないか」


(よし、ここからが本番だ、論理と圧力のフルコースを味わわせてやる)


力也はわざとらしく大胸筋をピクピクと動かした。


「俺はスポーツ推薦で入学した身です、学業でトップに立てば一般入試組のプライドを粉砕し学園の秩序が崩壊しますよ」


「そ、それは考えすぎだ」


「さらに個人情報保護法第十六条における利用目的の制限に抵触する恐れがあります、俺は成績を廊下に掲示されることに同意していません」


「ううっ、そんな法律を持ち出されても……」


太田はハンカチで汗を拭きながら引き出しからプロテインバーを取り出した。


「これで手を打ってくれないか、掲示は学校の伝統なんだ」


「ありがたく頂きます、ですが俺の広背筋が法的措置も辞さないと怒り狂っていますよ」


力也はプロテインバーを受け取りつつも爽やかな脳筋スマイルでトドメを刺した。


太田は涙目になりながら力也の名前が書かれた掲示用の紙をゴミ箱へと捨てた。


放課後の静かな廊下の角で神崎凛は壁に背を預けていた。


私は少しだけ顔を出し職員室から出てくる力也くんを見つめた。


手に入れたプロテインバーをかじりながら彼は誰も見ていない場所で邪悪な笑みを浮かべていた。


「力也くんは全教科満点だったんだ」


私は小さく呟いてクスリと笑った。


テスト中、彼の手元を見る機会があったけれど、開始十分で鉛筆の音が止まっていた。


その後はずっと机の下で太ももを震わせて筋トレをしていたのだ。


(普通なら諦めて寝ているか見直しをするはずなのに、あんなに自信満々で筋トレを始めるなんておかしいと思ったんだよね)


さらに先ほどの職員室での見事な交渉術、というよりほとんど脅迫に近い論破。


個人情報保護法まで持ち出して教師を丸め込むなんて、ただの高校生にできることじゃない。


「自分の実力を試すためだけに満点を取って、わざわざそれを隠滅させるなんて、本当に意地悪で面白い人」


力也くんの完璧な偽装は、私にとって極上のエンターテインメントだ。


彼がわざと筋肉バカを演じて周囲を混乱させている事実を知っているのは私だけ。


私は彼が立ち去った方向を見つめながら、次々と溢れ出る知的好奇心に胸を躍らせていた。


(いつか、あの完璧な筋肉の仮面を完全に剥がしてみたいかも)


私は甘い香水を漂わせながら、ご機嫌な足取りで寮への帰路についた。

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