17話 ステナさんって、怪力なんすね
クロムの衝撃的な発言で静まり返った広場。
突如として投げ込まれた巨大な柱は、その静けさを連れ去ってしまった。クロム自身さえも巻き込んで――
「何が起きたんだ!?」
「分からん。しかし、俺たちは助かったのか......」
村人たちは目の前で起きたことを理解できずにいながらも、自分たちを殺めようとしていたクロムの姿が無いことに安堵している。
「クロム隊長!!」
事態を確認しようとした騎士達が、残されたクロムの脚のもとへ駆けつける。
「なんてことだ......」
「ひでえ」
騎士達の目の前には無惨にも胴体から引き離されたクロムの脚が、血だまりの中に立っていた。
「と、とにかくクロム隊長を探しに行くぞ!」
「そうだな」
「確かあっちの方へ飛んで行ったな」
騎士達は話し合うと、柱が飛び去った方へと走っていく。
走り去っていく騎士達の背中を見送ると、村人たちは歓声を上げた。
「やったぞ! あいつらが帰っていった!」
「俺たち助かったのか?」
「きっとそうよ!」
「やったぞ!!」
広場が一瞬にして日常に戻っていく。
その広場の片隅でリンは、いまだ目を覚まさないダンに語りかける。
「あなた、私たちの村を誰かが守ってくれたわ。お願い、目を覚まして......」
すると、目を瞑ったままダンの口元がわずかに微笑んだ。
「あなた――」
その頃、ダンの家ではオガタが床に座り込んでいた。
全身に巡らせた強制転位をただ一つの投げるという動作にフルパワーで注ぎ込んだ。その反動は想像以上だった。
(全身がひどい筋肉痛のような感覚になってるな。特に下半身が動きそうにない。)
筋肉の大きい下半身の方が、比例して出力が大きい。その反動もまた、筋肉の大きさに比例するのだろう。
「オガタさん、大丈夫!?」
ステナが心配して駆け寄る。
「すまない、ステナ。立てそうにないんだ」
「わ、分かったわ。私が抱えてあげる!」
(え???)
オガタは、ステナが言っている意味が一瞬分からず思考が止まる。
しかし、また頭が回りだす頃にはもう手遅れになっていた。
「よいしょ!」
「ちょ、ステナさん!?」
ステナはオガタを抱きかかえて満足気だ。
「立てないってことは、移動できないんでしょ。私がこのまま運んであげるよ~」
「いやまあ、そうなんだけど。重いしそんな無理しなくていいよ......」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ! 私、オガタさんほどじゃないけど力には自信あるんだよ!」
「そう、なんだね......」
オガタは諦めて、ステナに身体を預けることにした。
「とりあえず、広場に向かおう。だいたいはサーチで把握してるけど、直接確認したいからね」
「オッケー! 任せて」
(おっけー?? 確か英語はこの世界では通じないはず。何かが変わり始めている......?)
オガタはこの疑問について考え始めようとしたが、今は広場の状況確認が最優先であるから思考を切り替える。
ステナとオガタが広場に近づくと、多くの村人が二人を取り囲んだ。
「ステナ! どこに行ってたんだよ!」
「さっきの見たか? 凄かったぞ。でっけえ塊が騎士団長をぶっ飛ばしちまった!」
「何だったんだろうな、あれ!」
「うん、うん。褒めたまえ~褒めたまえ~」
ステナは得意げに胸を張っている。もちろん、オガタを抱えたままだ。
「なんでお前がそんなに偉そうにしてるんだよ」
「ていうか、そいつは誰だ?」
ステナは、待ってましたとばかりにオガタを頭の上に掲げた。
「よくぞ聞いてくれました! なんと、このオガタさんが騎士団長をやっつけてくれた張本人なんです!」
一瞬沈黙が訪れた。しかし、少し間が空き――
「えええええぇぇぇ!」
村人一同、声を揃えて驚きの声をあげる。
オガタは周りの反応に多少気圧されながらも自己紹介を始めた。
「えーと、こんな高い場所からすいません。男鹿崇といいます。普段はプロフェッサーで――」




