97 パーティー前夜(1)
王都では、いつもと同じ屋敷があてがわれた。
メンテを中心に部屋が整えられていく。
入っていく荷物の脇を通り抜け、チュチュは王都に来た時のお約束を守りにいかないといけなかった。
つまり、王都にある侯爵家に顔を出す事だ。
今回の城のパーティーには、パパとママも呼ばれているので、二人とも王都にいるらしいのだ。ママは基本的に領地のお屋敷の方にいるから、しっかりしたドレスで会うのも久しぶりだ。たぶん、数年ぶり。
一人、てけてけと王都を歩く。
町は、いつもよりも賑わっている。
今回のパーティーは、翼竜退治を祝う、王都をあげての祭りの一環だ。
城でのパーティーに出席する人間も多いことだろうし、町の人たちは町の人たちでお祭り騒ぎ。
貴族や平民の区別なく、今は町全体が賑わいを見せていた。
いろいろな誘惑の中、ドーナツを一袋、屋敷へのお土産にした。
袋を抱え、走って侯爵邸へ向かう。
次第に、貴族たちの家々が並ぶ街並みへ入っていく。
コンスタン侯爵邸は、その街並みを過ぎた、さらに奥に建っている。
侯爵という位が高い、というよりは、昔話に出てくるほど昔からある家だからだろう。
王の側を守る伯爵の一族がシュバルツ家なら、王都を囲むように守る侯爵の一族がコンスタンだ。
大きな門の前で、門番のお兄さんに敬礼をすると、
「お帰りなさいませ」
という声と共に、敬礼を返してくれた。
「ただいま!」
玄関へ足取り軽く向かうと、扉へ到達する前に、扉が開いた。
こちらへ向かって来るチュチュの姿が見えたのだろう。
扉の向こうには、笑顔のパパとママが腕を広げて立っていた。
「パパ!ママ!ただいま!!」
そのまま二人へ飛び込むと、パパが振り回すように受け止めてくれた。
「チュチュ!」
ママにぎゅうっと抱きしめられる。
「……ん?」
「心配したんだからぁ〜」
「ママ?」
なぜか、ママが半泣きだ。
顔をよく見ると、実際、ママの瞳がうるうるだった。
高めのポニーテールにした髪も、心なしかしょぼんとしている。
「……翼竜が、学園を襲ったって聞いて……。気が気じゃなかったんだから……」
「…………あ」
きっと、無事だって連絡もいってたはずなのに。
それでも、心配かけちゃってたんだ……。
「うん。アタシは無事だよ、ママ」
そんなチュチュとママの頭をぐりぐりと撫でながら、
「ほら、入るぞ」
なんてパパが促す。
うん、アタシ、帰ってきた。
年に一度しか帰ってこない家だけれど、疎外感は感じない。
疎外感を感じないようにしてくれているのは、この両親の愛情のおかげ。そして、屋敷のみんなの思いやりのおかげ。
大きな袋に入ったドーナツを執事に渡すと、応接室へと向かう。
「荷物は?」
「お屋敷置いてきちゃった」
「パーティーの準備、ここですればいいのに」
「でも、みんな居るし。みんなと準備したいんだ」
「そう……。そうね。大人になったってことね」
チュチュのママ、オリヴィアさんが言うには、キリアンは妻を溺愛しすぎ、とのこと。




