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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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96/110

96 パーティーの前に

 いよいよ、王都へ出発する朝が来た。

 どさっ、と馬車に荷物が詰め込まれる。


 アタシたち3人のと、メンテの。ヴァルの。だとしたらこれは……。

 一つ、余分な大きな荷物を見る。

 先生の?


「ねぇ、ヴァル」


 隣にいたヴァルに声をかける。

「先生も一緒に行けるんだよね?」

「え?」

 食料の確認をしていたヴァルは、「ああ」といった顔をつくる。

「パーティーには一緒に行くよ」

「…………王都には?」


 そう聞くと、ヴァルが何故か、少し言いよどんだ。

「……やる事があるから、先に行くって」


 やる事?


 確かに、リナリはここに居るものの、リナリの招待状は図書館に届いたこともあって、リナリは図書館でパートナーを決めてしまっている。

 学園以外でパートナーといったら、やはり妹だろうか。


 きっと事前に準備があるんだ。


「じゃあもう学園には……」

 言いかけた時。

 厩舎の方から、馬が飛び出して来た。


 馬上の人物と、目が合う。


「せん……せ……?」


 それはシエロだった。

 チュチュを見つけたシエロが、ふっと笑う。


「…………」


 久しぶりに見た笑顔だった。

 それでいて、今まで見た事がないくらいに、さっぱりとしていた。

 それでいて、優しい。

 まるで地上から見る青空みたいだ。


 な…………。


 え………………?


 先生が、他人に向かってあんな明るい顔を向けるなんて。


 シエロは、王都へ向かい、馬を走らせる。

 見たこともない黒い馬だけれど、何処かで借りて来たのだろうか。

 白い魔術師のマントを靡かせ、どんどん小さくなってしまう。

 その姿に、目が離せなくなる。


「なんだ、あれ」

 ヴァルが呆れた顔をした。

 振り向いたヴァルが、チュチュの顔を見て、さらに言葉を失った。


 その日、残りの5人で馬車に乗った。

 沢山のマットに、沢山のクッション。

 そこから厳選した特別手触りのいいクッションを抱える。


 さっきの、シエロの顔が頭から離れなくなっていた。


 小さく膝を抱えるチュチュの、右にエマ、左にリナリが座る。

 同じような格好で、必要以上にぎゅっとくっついているので、チュチュは両側から挟まれる形で収まっている。


「せんせ……元気そうでよかった……」

 よかったと言うには、元気のない声が出てしまう。

 けど、どうしても、あの笑顔の意味を考えてしまうのだ。


「改めて、お断りしたから……、離れられて、すっきりしたのかな」


 呟くと、目の前で馬車の縁に肘をついて外を眺めていたヴァルが、ふいっと三人の方を向いた。

 一瞬何か言いたそうにしたけれど、またすぐに外を向いてしまった。


「……アタシに……、もう……、近付かれなくて、済むから…………」


 自分で言ってて、涙ぐむ。


「そんな事ないよ」

 耳元で、静かなエマの声が聞こえた。

「先生は、チュチュにそんな意地悪な笑顔を向けるような人じゃないよ」


「うん」

そうだといい。

そうだといいと思いながら、手で涙を拭った。

馬はシュバルツ家から借りてきた馬です。シュバルツさんちは黒とか白とかはっきりした色の馬が多いです。

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