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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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94/110

94 バカだな

 みんなが帰っても、なぜか学園に居なかったシエロが、一人、ひどい格好で戻って来たのは、夏のある日の事だった。


 ドッ……、と血に塗れたシエロが、階段の下で倒れた。

 それを最初に見つけたのは、チュチュだった。

「えっ……!?せんせ……!!??嘘……誰か……!!」


 みんなが駆けつけた時には、シエロはすでに気を失っていた。

 腕が大きく切り付けられ、そこから血が出ている。

 他にも、痛がっているところがありそうだった。


 ヴァルは、メンテと共に、シエロの部屋までなんとか運んで行った。

 どさっとベッドに転がすなり、

「重……」

 とため息を吐く。


「誰にこんな事……」

 言いながら、服を脱がしていくと、ある事に気付く。


 大きな切り傷以外に、打撲が数ヶ所。

 相手は刃物を持っていただろうに、どうして……。

 それにしては、頭を狙う事はしなかったようだな。

 この状態で引き返してくるシエロに、追い打ちをかけるわけでもなく。


「…………」


 相手は剣の使い手。

 けれど、……シエロを傷付けないように手加減した?

 いくらなんでもシエロにそんなことができる人間、そう多くは……。


 考え出した所で、一人の人間に行き着く。


 まさか……。


「ヴァル、タオル、持ってきたよ」

「ああ」

 メンテから湯で濡らしたタオルを受け取ると、身体に付いた血液を拭っていく。


 拭いながらも、その人物以外にこんなことができる人間、いないと思ってしまう。


 なんで、寄りにもよってこんな状況で、こんな事になるんだよ……。


「はぁ……」

 とまたため息を一つつくと、ぼんやりとシエロが目を覚ました。


「……大丈夫か?」

「ああ……」

 にこっとシエロが笑う。

「つい……どうしていいか、わからなくなったんだ。こんな感情、初めてで」


 その言葉に、ヴァルは相手を確信した。


「で、なんでそっちに突っ走るんだよ……。チュチュなんて、顔真っ青だったぞ」


「…………それは、いい傾向だね」


「お前ホント……バカだな」


 ヴァルはため息混じりにそう言うと、メンテに薬の処置を頼んで、一旦部屋を出た。


「ヴァ……ル…………」

 扉の前にずっと居たと思われるチュチュは、エマとリナリに支えられ、涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。

「先生はどうなの…………」

 小さな声。

 不安で堪らないのだろう。

「大丈夫だよ。気がついたし、学園長の薬こっそり使ってやったから、すぐ良くなるよ」

「よかったね……」

 エマがそう言ったのがきっかけとなったようだった。

 チュチュは弾けるように泣き出し、声は、シエロとメンテがいる部屋の中にも響いた。

さて、ラストシーンまでもう少し!

ここからはいつものほのぼのラブコメで行きたいと思います。

最後までどうぞお付き合いくださいな!

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