91 本気なの?(1)
明日は、リナリが帰る日だった。
なんだかんだ任されたたくさんの仕事を、レーヴの秘書のゴールディに引き継いで行く。
「この詳しい資料は、別にこっちに用意してあります」
「なるほど」
パラパラっとめくると、
「いい資料ね」
と、受け取ってくれる。
なんでも、すぐに理解されてしまう。
あたしは、あんなに大変だったのに。
毎日、ラビラントさんに並ぼうって必死で。
でも。
この人は、もうラビラントさんの隣に並んでいるんだ。
悲しくなる。
また、ここに戻ってきたいと思う。
けど、もう要らないって思われてたら?
ゴールディさんみたいな、完璧な人じゃない。
完璧じゃないから、ゴールディさんの方がいいって思われてたら?
あたしと違って、大人っぽい人。
あたしと違って、仕事がよくできる人。
あたしと違って……。
美人で。
スタイルも良くて。
せめて、あたしが子供じゃなければよかったのに。
「…………」
引き継ぎが一息ついたところで、リナリは一つため息をついた。
「リナリさん」
躊躇いのある呼びかけ。
……あまり好ましくない雰囲気。
「はい」
「あの、こんなこと聞くのはよくないかも知れないけど」
見つめたゴールディは、視線を真っ直ぐにこちらに向けていた。
「あなた、レーヴのこと……本気なの?」
「え……?」
なんで、そんなこと聞くの。
この人が。
よりにもよって、この人が。
ラビラントさんの、隣に居られるこの人が。
「あ、あたし……」
声が、震える。
けど、ここで負けられない。
ずっと、……ずっと好きなんだから。
「本気、です」
「そう……」
それだけを言って、沈黙する。
困ったような顔。
それでいて、憐れむような顔。
「……これはね、余計なお世話かもしれないんだけど……」
何……?
本当に……、この人が……、ラビラントさんの恋人だったりするのかな……。
心臓が跳ね上がる。
緊張の面持ちのリナリに、ゴールディが口を開く。
「あの人は……、やめた方がいいと思う……。もし、まだ引き返せるなら」
言いにくそうな声。
なんで?
なんで、諦めないといけないの?
なんで、この人が諦めさせようとするの?
「なんで……ですか」
声が、小さく震える。
「性格が悪すぎるから……。後できっと後悔する」
性格って……。
あんなに優しいのに。
「もう……引き返せないので……。ここで引き返した方が……、きっと後悔する、から……」
「ごめんなさい……」
そう、返事が来た。扉が開いたのは、その時だ。
ガチャ。
ノックもなく入ってくるのは、ここで仕事をしている3人以外いない。
ここにすでに2人いるってことは……。
振り向くと、そこにはレーヴが立っていた。
リナリの話は、これがラストエピソードになる、かな?
どうぞよろしくお願いしますね!




