90 ライバルということで(2)
数日して、ヴァル達が戻ってきた。
父はなんだか機嫌が悪そうだったけれど、子供達には懐かれたようだ。
「勝負だ!」
「とーう!」
子供達が小さな木刀を振り回してヴァルを囲んでいる。
ヴァルの方は、子供相手に闇の魔術を使うわけにもいかず、剣術の方はさほどうまくもないので、いなしながらも少々苦戦しているようだ。
なぜかうちの実家にずっと居座っているけれど、父の仕事の手伝いもなぜか続いているようだし、会う機会もなく、時々こうして遊んでいる姿を見るのが精一杯。
エマの方はというと、定期的に女子会をしつつ、チュチュと一緒に作法などの貴族らしいことを学んで過ごしていた。
学校ではほとんど作法の時間はないので、夏休みがちょうどいいのだ。
とはいえ、シエロくんの作法が完璧だから、居るだけで勉強にもなってるんだけど。
チュチュは、次第に元気になってきていた。
また、シエロに会えばどうなるかわからない。
突然、吹っ切れたなんてこともないだろう。
何せ、10年もシエロと二人でやってきたんだから。
これからも師匠と弟子として関係していかないといかないのなら、ここから忘れるのも難しい相談だ。
そんな日常を過ごし、あっという間に帰る日がやってきた。
出立の朝まで、ヴァルは子供達と遊び回っていた。
朝食を食べてから三人で外で遊んでいたらしく、玄関を通りすがった時、戻ってきた三人の騒がしい声が聞こえた。
「僕が最初だからな!」
「いいよ。どうせ僕のものになるんだから」
「誰が誰のだって……」
「ヴァルくんのものでもないからね」
「みんなすごく仲良くなったみたいだね」
声をかけると、三人が三人とも、申し合わせたようにぴったりと止まった。
「…………?」
「お姉様〜」
そう言って飛び掛かってきたのは、ニールだ。
受け止めると、ピエリスの「ずるいぞ!」という声がした。
「いいよ」
とニールがピエリスを振り返って言うと、ヴァルが眉を寄せた。
ピエリスが、エマの前に立つ。
「……どうしたの?」
みんな揃いも揃って。
ピエリスが珍しく、上目遣いしたかと思うと、そっと手を出してきた。
その小さな手には、花で作った指輪がつままれている。
「かわいいね。……私に?」
「……うん」
「ありがとう……」
生まれてから、全く一緒にいられなかった弟だけれど、こんな日が来るなんて……。
手のひらを上に差し出すと、ころんと指輪が手のひらの上に転がされた。
「かわいい」
にこっと笑うと、
「お姉様?僕も!」
と、もう一つ、花でできた指輪が転がってくる。
「ニール……!」
本当のお姉ちゃんになれるわけないと思っていたけど……、思ったよりお姉ちゃんぽく出来てるのかな。
本当に、ちょっと感動し、二人を抱きしめようとしたその時だった。
ころん。
小さな指輪がもう一つ、手の中に転がってきた。
「…………」
「俺も」
横から手を出してきたのは、間違いなくヴァルだった。
「………………?????」
え、ちょっと待って。
ヴァルの顔を見たけれど、いつも通りの普通の顔をしている。
小さな子供達は、何やらお互い耳打ちしている。
「うーわー」
「あいつ、本気かよ」
…………子供達と一緒に作ったってだけで、他意はない……よね????
「あ、ありが…………とう……?」
その瞬間、「フッ」と笑ったヴァルの顔が、あまりにも明るい顔だったから、何か勘違いしそうになった。
そんなわけでほわほわっとヴァルとエマちゃんのお話なのでした。
次回からはリナリちゃんの話にしようかな。




