89 ライバルということで(1)
大きな港町に連れて来られ、ヴァルは休む間もなく働かされていた。
「う〜〜〜〜〜ん」
久々の休憩は、昼食がてら、チビ達の面倒を見ていないといけなかった。
町が見渡せる小高い丘は、がらんとしていてなかなか居心地がいい。
チビ達も、そこらを走らせておけばいいので楽だ。
チビ達の居場所を確認しつつ、ヴァルは昼食に買ったサンドイッチの包みを開ける。
「あっ、僕も!!」
「ぼーくーもー!」
サンドイッチを開けた瞬間、チビが二人揃って飛びかかってくる。
それをいなす元気もないまま、二人にのしかかられながらも、ヴァルはサンドイッチを頬張った。
瞬発力のようなものなら自信があるが、持続力などになると、からっきしになる。
これでも、魔術師なのだ。
体力はそこそこ。
けれど、疲れたなどと言っていられない。
なぜ、ここに連れて来られたのかはさっぱりだけれど、相手はエマの父親なのだ。
無下にも出来ず、言うことを聞かないわけにもいかない。
「見て!綺麗でしょう?」
グレーの髪の少年が、花で作った小さな輪っかを掲げている。
エマの弟のピエリスだ。
「指輪だー!」
赤毛の方がつっこむ。
こっちは、メイドの息子のニール。
「ふふふ」とピエリスが満足そうに笑った。
「僕、お姉様と結婚するんだ」
「…………ぐっ!?」
あまりに突然の事に、ヴァルは喉を詰まらせそうになる。
「なっ……お前……っ」
口にサンドイッチを詰め込んだまま、思わず声を上げた。
「姉弟関係は結婚出来ないんだよ」
ニールの冷静な声に、ヴァルも冷静さを取り戻す。
「そ、そうだぞ。血が繋がっている結婚は、認められてないんだ」
ニールが「ふふっ」と笑う。
「だから、結婚するのは僕の方なんだよ」
「なっ……!!」
慌ててしまう。
子供の戯言だとしても。
「だめだ」
言い合いを始めようとした二人が、ヴァルの方を向く。
「なんで……」
ニールが少し泣きそうだ。
「エマは……、俺のだから」
「お姉様は渡しません!」
「渡すも何も……」
「結婚の約束してるわけじゃないんでしょ?」
ニールに詰め寄られ、たじたじになる。
「…………」
ヴァルが、俯く。
目の前の草原が見えて。
そこらに白い花が咲いている。
ピエリスが指輪を作った花だ。
「土台ができたら……」
そう、つぶやいた。
こんな奴らに、本気で向かい合う必要はあるのだろうか。
けど、こいつらが本気なら。
「いつか、お前らに認められて、お前らの姉さんを連れて行けるようになるから。……頑張らせてくれないか」
「…………」
二人が、何かを考える顔で、ヴァルの方を見ていた。
少しの沈黙の後、ピエリスが、がばっと立ち上がる。
「お前がダメだって思ったら、お姉様は僕らがもらうからな!」
でかい声。
ヴァルは、「フッ」と笑った。
「ああ。肝に銘じるよ」
仲良し二人組かわいいですよね。




