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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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89/110

89 ライバルということで(1)

 大きな港町に連れて来られ、ヴァルは休む間もなく働かされていた。

「う〜〜〜〜〜ん」

 久々の休憩は、昼食がてら、チビ達の面倒を見ていないといけなかった。

 町が見渡せる小高い丘は、がらんとしていてなかなか居心地がいい。

 チビ達も、そこらを走らせておけばいいので楽だ。

 チビ達の居場所を確認しつつ、ヴァルは昼食に買ったサンドイッチの包みを開ける。


「あっ、僕も!!」

「ぼーくーもー!」


 サンドイッチを開けた瞬間、チビが二人揃って飛びかかってくる。

 それをいなす元気もないまま、二人にのしかかられながらも、ヴァルはサンドイッチを頬張った。


 瞬発力のようなものなら自信があるが、持続力などになると、からっきしになる。

 これでも、魔術師なのだ。

 体力はそこそこ。


 けれど、疲れたなどと言っていられない。

 なぜ、ここに連れて来られたのかはさっぱりだけれど、相手はエマの父親なのだ。

 無下にも出来ず、言うことを聞かないわけにもいかない。


「見て!綺麗でしょう?」

 グレーの髪の少年が、花で作った小さな輪っかを掲げている。

 エマの弟のピエリスだ。

「指輪だー!」

 赤毛の方がつっこむ。

 こっちは、メイドの息子のニール。

「ふふふ」とピエリスが満足そうに笑った。


「僕、お姉様と結婚するんだ」


「…………ぐっ!?」

 あまりに突然の事に、ヴァルは喉を詰まらせそうになる。

「なっ……お前……っ」

 口にサンドイッチを詰め込んだまま、思わず声を上げた。


「姉弟関係は結婚出来ないんだよ」

 ニールの冷静な声に、ヴァルも冷静さを取り戻す。


「そ、そうだぞ。血が繋がっている結婚は、認められてないんだ」


 ニールが「ふふっ」と笑う。

「だから、結婚するのは僕の方なんだよ」


「なっ……!!」

 慌ててしまう。

 子供の戯言だとしても。


「だめだ」


 言い合いを始めようとした二人が、ヴァルの方を向く。


「なんで……」

 ニールが少し泣きそうだ。


「エマは……、俺のだから」


「お姉様は渡しません!」

「渡すも何も……」

「結婚の約束してるわけじゃないんでしょ?」

 ニールに詰め寄られ、たじたじになる。


「…………」


 ヴァルが、俯く。

 目の前の草原が見えて。

 そこらに白い花が咲いている。

 ピエリスが指輪を作った花だ。

「土台ができたら……」

 そう、つぶやいた。


 こんな奴らに、本気で向かい合う必要はあるのだろうか。

 けど、こいつらが本気なら。


「いつか、お前らに認められて、お前らの姉さんを連れて行けるようになるから。……頑張らせてくれないか」


 「…………」

 二人が、何かを考える顔で、ヴァルの方を見ていた。


 少しの沈黙の後、ピエリスが、がばっと立ち上がる。

「お前がダメだって思ったら、お姉様は僕らがもらうからな!」

 でかい声。


 ヴァルは、「フッ」と笑った。

「ああ。肝に銘じるよ」

仲良し二人組かわいいですよね。

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