86 紅茶の香り(1)
それから、すぐに客間に通された。
ソファに座っているのは、チュチュ、ヴァル、そしてエマなのだけれど、エマの両側には、少年が一人ずつくっついていた。
どちらも現在、5歳。
一人は、グレーの髪をしたちょっとしっかりしていそうな少年。
もう一人は、赤毛でそばかすのほわっとした少年だ。
「……その二人は?」
ヴァルが、横目でエマに尋ねる。
「ああ、こっちは弟のピエリス」
とん、と示したのはグレーの髪の方。
ピエリスは髪の色から顔つきまで、父にそっくりなのだ。
「そしてこっちが、うちの使用人の子のニール」
示したのは、赤毛の方だ。
ピエリスはヴァルをマウントを取る時の顔で睨みつけエマの腕をぎゅっと握り直したし、ニールは嬉しそうな顔でエマの腕に巻きついた。
「…………」
ヴァルが、むっとする。
「……弟はともかく、こっちのはただの知り合いだろ?」
「あはは」とエマは笑った。
「どっちも弟みたいなものだよ。二人ともこの屋敷で育ってるんだもん」
実際、この二人は生まれた時からこの屋敷で一緒に育っている。
そう定められたわけではないが、ランドルフとヴァルの関係にも近いのではないだろうか。
たまたま年齢が同じだったこともあり、いつも一緒にいて、双子じゃないのが不思議なくらいだ。
「……この赤毛、誰かに似てるな」
「似てる……?おじさん、かな。塔の魔術師なんだ。会ったことあるよね」
「あ〜〜〜〜〜」
ヴァルが心なしか低い声を出した。
ニールの母親は、ここでメイドをしているルチア。
学園のみんなで塔の見学に行った時、部屋までお邪魔したルクスが、ルチアの弟なのだ。
「こっち来いよ」
と、ヴァルが手招きすると、ニールは不安そうな顔でエマに寄りかかる。
「…………」
「逆効果だったね」
チュチュが呆れた顔で苦笑した。
コンコン。
そこへルチアが入ってきた。
「ジークヴァルト様。それにピエリス、ニール。子爵様がお呼びです」
「…………俺……、と、この二人を?」
呼ばれた三人は、呼ばれた理由の予想もつかず、それぞれにきょとんとした顔をした。
「はい」
「…………じゃあ」
三人が、渋々その場を立つ。
「ヴァル、またね」
エマがにっこりとしたので、ヴァルが微笑もうとしたけれど、エマに纏わり付いた二人が、
「お姉様〜」
と抱きついたので、ヴァルの顔がそのままひきつった。
後には、エマとチュチュの二人が残された。
そこへ軽快な音を立てて扉を開けたのは、マリアだった。
「お嬢様方!お茶の準備が整いましたよ。いらっしゃってください」
エマとチュチュが二人で顔を見合わせた。
ピエリスとニールは、幼なじみの同い年です。
だいたい同じ格好をしており、基本的にいつでも一緒。
双子じゃないのが不思議なくらいです。




