79 あなたの隣(1)
その日、リナリは少しだけ寝不足だった。
図書館の生活に慣れてしまうと、これだけ本のある生活だ。
じっとしていられるわけがない。
貸出許可証は肌身離さず、毎日のように新しい本を借りてきていた。
昨日は、新しい小説と鉱石についての本、2冊を借りた。
それが思いの外、どちらも読み応えがあったのでつい夜更かししてしまったのだ。
子供向けの恋愛ものだっていうから、すぐに読み終わるかと思ったけど、セリフがどれも深くて素敵だからつい読み直しちゃった。
鉱石の本も、それぞれの石の逸話がたくさん載っていて、わかりやすかった。チュチュが見たら喜ぶかな。
デスクでふわっと欠伸をする。
そこにはレーヴも居たのだけれど、部屋の中は、陽もそれほど入らず、静まり返っていて、どうしてもぼんやりとしてしまう。
「リナリさん」
「ひゃいっ」
つい、慌ててしまう。
レーヴはそんなリナリにお構いなしに、落ち着いて会話を続ける。
「お仕事には、もう慣れましたか?」
「あ、はい」
リナリが微笑んだ。
リナリは今、レーヴの秘書のような助手のようなことをやっている。
書類書き、手紙の仕分け、スケジュール管理なども。
「よかったです」
レーヴに微笑んでもらい、気分が高揚する。
「それで、次のお仕事なんですが」
「はい、なんでしょうか」
リナリが真剣な顔になった。
リナリは、正式にここの職員になれたわけではない。
学園生であることには変わりなく、あと1週間ほどで、学園に戻ることになっている。
最後までひとつひとつのお仕事を、丁寧にこなしたい。
そして、仕事のことはなんでも覚えて、学園に戻ってからラビラントさんに関することを勉強し直すんだ。
また、この場所に居られるように。
「次は、執筆のお手伝いをして欲しいんです」
「執筆……」
確かに、レーヴは、魔術に関する本を何冊も出している。
リナリはもちろん全ての本を持っている。
新しい本の執筆のお手伝いをあたしが……?
「いいんですか?」
自然とワクワクしてしまう。
「もちろんですよ」
レーヴがにっこりと笑顔になった。
そして、こう付け加えた。
「それで、取材旅行について来てほしいんですよ」
「…………」
え!?
本の執筆の為の旅行に、あたしが……。
どうしよう。
胸がドキドキする。
そばで、手伝う事が出来るなんて。
そばに居て欲しいって言われるなんて。
「あたしで……、いいんですか?」
そう言うと、レーヴは、少しだけ驚いた顔をして。けれど、直ぐににっこりと笑って。
「もちろん。あなたがいいんですよ」
と、そう言った。
う…………。
なんだかまるで、心臓が撃ち抜かれたみたいだ。
これはデートじゃないのだから、はしゃぎすぎちゃいけない。
そう、いつもの書類仕事が認められて、お仕事に同行できるようになっただけなのだから。
期待しちゃダメって、わかってるのに。
どうしても、変に喜んでしまう自分を抑えることができなかった。
しばらくリナリとレーヴのお話にしたいと思います。
リナリの片想いに決着がつく日は来るのでしょうか。




