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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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78/110

78 ぼくがそばに居るよ

「な、な、な、なん…………」


 チュチュが慌ててメンテの顔を見た。


 頭の中で、現状を確認する。


 メンテが……、アタシの……、ほ……ほっぺに…………。


「……え?????」


 かあっと頬が火照る。


 慰めてくれただけ?

 でも……、こんなの……。


「こんなの……」


 戸惑いながらもじっとメンテの顔を見ると、メンテは優しく笑った。


「なんでこんな……」

 困った顔を見せると、メンテがチュチュの手を取った。


「言ったでしょ。慰めてあげるって」


 混乱するチュチュをメンテの手が引く。

 チュチュは大人しくメンテについて行くことにした。

 その優しい顔しか、今は頼れるものがなかったし、抵抗する気力も湧かなかった。

 わざわざここに残る理由も思い浮かばなかった。


 チュチュは手を引かれたまま、黙々と森の中を歩いた。

 ただ静かな場所を歩いているというだけで、少しは元気になれるような気がした。


 椅子に座らされ、やっとそこで、そこが何処かのカフェであることに気がついた。

 そこはどうやら、町の中にある雑貨屋の、裏手のテラスに併設してあるカフェのようだった。

 目の前には、甘そうなソーダと、果物が山のように盛られたワッフルのお皿が出された。


 あ、これ、先生好きそう……。


 思った瞬間に、涙がどばどばと流れる。


「メンテぇ……」


 目の前に座っているメンテの前にも、同じものが出された。

 まだワッフルに手を伸ばせないチュチュを気遣うこともなく、メンテは上品にワッフルを口に運び始める。


「……ここなら、大丈夫だよ。誰かに見られることもないから」


 確かに、そこは、雑貨屋の中庭ではあったのだけれど、周りは建物に阻まれていて、お世辞にも景色がいいとは言い難い。

 他に誰もいないテラス。

 言われてみればチュチュでさえ、雑貨屋がこんな場所でカフェをしているなんて知らなかった。

 そこは、メンテの隠れ家的なお店なのかもしれなかった。


「アタシ……っ、アタシね、ちょっと期待しちゃってたの」

「……うん」


「でも……、当たり前なんだけどさ、ダメだ……った……」

 そう言った瞬間、自分でも驚くほど涙がこぼれた。


「わ、分かってたのに……っ。そんなのありえないって……。気持ちを伝えるだけでいいって、思ってたのに……。好きって言えば言うほど、どんどん好きになっていっちゃって……。毎日先生のことばっかり考えちゃうの……」


「……うん」


「なんでえええええええ!?もうやだああああああ!アタシ、学園辞める〜〜〜〜〜〜!!!」

 自然と、声はどんどん大きくなった。

 嗚咽も大きくなり、誤魔化せないくらいの号泣になる。


 すると流石に、メンテもなだめるような雰囲気になった。

「チュチュ」


「ふっ…………、うぐっ…………」

 なんとか立て直そうとするけれど、頑張れば頑張るほど上手く行かなかった。


「大丈夫だよ。ぼくがそばに居るよ」


 自分の嗚咽の中で、メンテの声が聞こえた。

「ひ……っ、うぇぇ…………」


「同じ弟子の立場だろ。いつだって辛い時は一緒に居るよ」


「ぅ…………」


 なんだか妙な感じだ。

 メンテがこんなことを言うなんて。

 あまり人を気遣わないタイプの人間だ。

 それも、こんなことで嘘をついたことのない人だ。


 なんだか本当に、いつだって……、実習の間だってご飯の時だって……、いつだって一緒に居てくれるんじゃないかって気がした。


「うん……」


 落ち着いた所で、メンテがチュチュの口に、ソーダのストローを突っ込んだ。

 まだ残る小さな嗚咽に合わせて、ストローはズルズルと、気の抜ける音を立てた。

ここで一旦一区切り。

次はしばらくリナリの方のエピソードにしたいと思います。

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