80 あなたの隣(2)
それからすぐ、リナリは、レーヴと共に旅行に行くことになった。
図書館の紋章がついた馬車で、向かい合う。
……御者さんはいるけど、他に居ないの…………?
二人きり???
少し戸惑う。
確かにお互い従者をつれ歩くような貴族ではないけれど、いつも一緒に仕事をしているゴールディさんすらいないなんて。
……いいの、かな。
ずっと向かい合っていると、どうしてもその存在が気になってしまう。
目が合うと、レーヴはその度に、にっこりと笑顔を見せてくれた。
穏やかで、暖かい。
ガタガタと、馬車の車輪が回る音が聞こえる。
辿り着いたのは小さな町だった。
採掘で成り立っている町らしく、騎士や魔術師以外にも、土に塗れた人が多い。
馬車を降りる時、レーヴが手を差し出してくる。
これは…………。
ヴァルがいつもエマにやってるやつ…………!
緊張してしまう。
手に汗でもかいてたらどうしよう。
けど。
ここは、平気な顔をしてその手に掴まるしかない。
「失礼、します」
その手に手を乗せる。
ひんやり、少し冷たいその手の体温が。
自分とは違うその手の体温が。
自分じゃないんだって、実感する。
「…………っ」
馬車を降りた瞬間、出来るだけ自然になるように手を離した。
レーヴのほわっとした笑顔が、リナリには眩しすぎた。
「ここでは、採掘場を見せてもらいながら、いろいろな人に精霊についての話を聞いていきます。それは実際に魔術の話でもいいし、伝承や子供向けの物語でもいいです」
「はい」
そうだ、遊びに来ているんじゃないんだから、しゃんとしなくちゃ。
リナリの顔が引き締まる。
「目的は、石の精霊に関する情報です」
「石……」
「石は珍しいですからね。ただこれは、すぐに本にするわけではなく、その下地とでも言いましょうか」
「わかりました」
確かに、チュチュという石の魔術師が身近にいるので忘れがちだけれど、石の祝福を受ける人間は少ない。
石の精霊は、その名の通り石頭なのでは、なんて言われているけれど、流石にそんな事で頑固だと言われる精霊もかわいそうだと、リナリは少し思う。
「それでは、今日は宿に行く前に採掘場を見に行きましょうか。時間は少ないですからね」
「はい!」
二人は採掘場へ案内してもらった。
採掘場と呼ばれるそこは、いくつもの洞窟が並んでいる。
「すごい……」
リナリが呟く。
それから、取材は滞りなく進んだ。
レーヴが話を聞き、リナリがメモを取る。
すっかり助手の雰囲気だ。
「今、活気があるのは、そこの第二路でしょうなぁ」
案内された洞窟は、確かに人の出入りが他よりも活発なようだった。
お茶を持って行く女性を見ながら、レーヴが尋ねる。
「では、入ってみたいのですが」
「そうですね。中に事務所が構えてあります。そこまでならいいでしょう。少し足場が悪いので、お気をつけくださいね」
毎度おなじみ、二人でお泊まりエピソードです!
この二人は二人っきりで居てもけっこうほのぼのかな?




