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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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76/110

76 これで最後にするから(1)

 その日の午後、シエロはチュチュと実習の予定だった。


 毎日午前中は座学を、午後は実習の時間にしてある。

 魔術の教師として、師匠として、一人一人に魔術を教えるため、順番に一人ずつの時間を設けてある。

 1日ずつ、メンテ、チュチュ、エマの順番で、その後は1日休み。

 4日で一周する計算だ。


 相手はチュチュ。

 見慣れたはずの、いつだって一緒に居たはずのその小さな女の子に会うのに、少しの緊張を覚える自分を少し腹立たしく思いながら、実習室へ向かう。


 今日は光の魔術を少しやっていこうか……。

 チュチュは教えただけだとすぐに忘れてしまうから、実習を交えて。

 エマに手伝ってもらうのもいいか。


 そんなことをしきりに考える。

 他のことをうっかり考えてしまわないように。


 かちゃり。


 耳慣れた音を立てて、扉を開ける。

 窓から陽の光が入る、艶々とした板張りの部屋。

 チュチュはすでにそこにいて、その部屋の中心にじっと立っていた。


「……どうしたの?」


 声をかける。


 あまりにも真剣な瞳で立っているものだから、少し躊躇してしまう。


 まっすぐな背筋。

 立ち姿を見ると、やはり綺麗だと思う。


「先生」


「…………」


 呼びかけられたけれど、返事をしていいのか戸惑った。

 これはきっと、先生と生徒としての会話ではないから。


「先生、」

 そうまたシエロに呼びかけると、チュチュがじっとシエロを見た。


「アタシ、これで終わりにするから」


「…………え?」


「今から、言うこと、よく聞いてて」


 この表情からして、きっと話は、「好き」だということだろう。

 それが“終わり”だということは、もう、この茶番のような色恋沙汰を終わりにするということだ。

 もう「好き」だと言うのをやめるということ。

 もう「好き」でいるのをやめるということ。


 それは、もうチュチュの「好き」という言葉を、聞けなくなることに他ならない。


「…………」


 それで……いいのか?


 自問自答する。


 エマの話を思い出す。

『好きって言っていいんだよ』


 そう、これが僕にとって気持ちに正直になる最後のチャンス。

 けど。

 考えてしまう。

 これは僕からチュチュを解放するためのチャンスでもあることを。


 僕さえ我慢すればいい。


 これ以上、この小さな女の子を好きになってしまう前に。


 これ以上、目を奪われる前に。


 これ以上、動揺しないように。


 手放したくないと思ってしまう前に。


「先生、アタシね、やっぱり先生、大好きなんだ」


 その声が、今にも泣き出しそうに聞こえる。


 これで最後だと、全力でぶつかってきてくれているのならば、それに応えないといけないのに。

 ちゃんとその言葉を聞いて、自分が出した答えを、伝えないといけないのに。


 その言葉を、聞きたくないと思ってしまったんだ。

シリアス展開、ですね。

さて、どうするどうなる〜!?

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