75 最後の決心
「告白……」
チュチュはそう一人呟いた。
雲越しの陽の光が教室を緩やかな明るさにしている。
教壇に立つシエロは、いつになく淡々と数学の授業を進めている。
それを真面目に聞きながら、チュチュは、じっと考えていた。
これで……最後にする。
「…………」
できる、かな。
けど、迷惑になりたくない。
今まで気持ちは十分伝えたから。
これだけ十分伝えて、それでも受け入れてもらえなかったんだから。
これで終わりにしないといけない。
それで、先生の事をもう好きじゃなくなって。
先生じゃない人を好きになって。
そうすれば……、また先生と自然にいられる。
また一緒に魔術の練習して。
つまんない雑談して。
今、これだけ嫌がられてるんだから。
アタシだって、その方が嬉しい。
その夜、チュチュはメンテの部屋を訪ねた。
コンコン。
かちゃ、と扉が開くと、メンテが小さく「うわっ」と声を上げた。
「……アタシだよ?」
そう言うと、メンテが苦笑する。
メンテは既に入浴後らしく、タオルで頭を拭いていた。
「どうしたの?チュチュ」
そう言われ、少し戸惑いながらも部屋に入れてもらう。
メンテがお茶の準備をしている間、扉からすぐのところで、座れないでいた。
言わなきゃ。
「メンテ、アタシね」
聞いているのかいないのか、メンテはこちらを向かなかった。
「最後に、告白して、それで諦めようと思うの」
そう言ったけれど、メンテはこちらを向かずに、最後までお茶を入れ続けた。
チュチュに出すためのカップにお茶が満たされて初めて、メンテがやっと顔を上げた。
「そっか」
微笑んでくれた。
チュチュはそこで、やっと少し安心して、テーブルのそばに座った。
「メンテには……、言っておきたかったって言うか……。宣言することで、自分が逃げないようにしたかったって言うか……」
もぞもぞと喋ったけれど、それでもメンテは嫌な顔一つしなかった。
「うん……。頑張って」
優しい声。
「メンテが、いつも応援してくれるから、アタシ、ここまでやってこれたよ」
「……そっか」
メンテが珍しく、照れたような、まるで甘えてるような顔をしたので、なんだか少し戸惑う。
「ずっと応援してるよ」
「…………うん」
なんだろう。
こんな顔、今まで見たことあっただろうか。
小さい頃から一緒にいて、ずっと、よく知っている男の子だった。
好きな物も嫌いな物も、全部知ってる。
毎日一緒に居て、ただ、“仲間”という言葉では収まらない、そんな男の子だった。
けど、アタシが知ってる男の子は、こんな男の子だっただろうか。
「ぼくは、ずっと、チュチュの味方だよ」
メンテがあまりにも真っ直ぐ見てくるので、なんだか少し、照れてしまう。
「もし振られたら……。振られることがあったら、ぼくが慰めてあげるよ」
「……………うん」
普通なら、ここで泣きそうになるのはアタシの方のはずなのに。
今泣きそうなのは、なぜかメンテの方だった。
どうしたの……かな。
お互いに恥ずかしいところを見せてしまって、お互いになんでも知っている気がするのに。
……アタシはなんだか、思っていたより知っているわけじゃないんじゃないかって、少しだけ思ったんだ。
ほわっとお話してるのいいですよね。
三角関係っぽさが増してきたね!!




