70 努力の行く先(3)
大勢の人間が、一つの場所に集中する。
大きな騒めきは、矢をつがえるだけで、しんと静まり返る。
メンテの弓に感嘆の声を上げた人々は、息を呑み、その手に集中した。
その手が、弓を引き締める。
時間が止まったかのような一瞬があり、そして、矢を放つ。
矢が的に当たった瞬間、その場から、歓声が上がった。
そんな調子で、選手3人が並び立ち、予選が進められる。
そこここで試合は行われており、順番に歓声が上がっていく。
メンテは、予選の4本を全て綺麗に的に当て、予選を突破した。
「また、次も頑張ろう」
弓に声を掛ける。
人混みの中へ下がった途端、
「いい弓ですね」
と、頭上から声がかけられた。
爽やかな笑顔。
そこには、一人の青年が立っていた。
「……ありがとうございます」
使い古された革の鎧を着ているところから、普段兵士をしている人なのだろう。
手には、大きな弓を持っていた。
……この人も、大会の参加者。
自然と、弓の方に目が行く。
……あれ?
その大きな弓。
メンテの弓ほど装飾されているわけでもなく、作りはシンプルだけれど。
……この持ち手。作り。
それは、どうやらトーラリス製の弓のようだった。
メンテの一族が作った弓だ。
確かに、トーラリス族は弓の一族で、作られた弓も、弓使いであれば知らない者はいない程の名品だ。
しかし、その物自体は、あまり市場に出てはいない。
トーラリスの弓が欲しければ、一族に会いに行けと言われるほどだ。
それも、トーラリス族は、それほど外部の人間に甘くは無い。
行ったところで、認められなければ弓を譲ってはくれない事でも有名だ。
……この人、トーラリスへ行ったのか……?
「僕も、頑張りますね」
穏やかな笑みを浮かべ、青年は的の前へと出ていった。
「……はい。頑張ってください」
その人の試合を、見ないわけにはいかなかった。
どうしても、トーラリスの弓を持っているというだけで、気になってしまう。
……ぼくは族長の息子だからこの弓を持てているだけで、ぼく自身が認められたわけじゃない。
息を整え、矢をつがえる姿が見える。
静寂が訪れる。
なんて真っ直ぐな瞳。
真っ直ぐな意志。
空気ごと切り裂いてしまうのじゃないかと思えるような一瞬の後、矢は的へと当たった。
……すごい。
目を見張った。
息が止まりそうだった。
……こんな人に勝てるんだろうか。
一瞬感じる孤独。
負けそうな気持ちの中で、思い出すのは、チュチュの笑顔だった。
森の中で、微笑むチュチュの笑顔。
『応援してるよ』
あの、声。
うん。
そうだ。
ぼくは……、この人に勝ちたい。
ぼくは、この人に勝たないといけないんだ。
だんだん三角関係っぽくなってきたでしょうか?
メンテにも頑張っていただきたいですね!




