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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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68/110

68 努力の行く先(1)

「サディークの町で、弓技大会があるらしいんだ」

 昼食時、そんな事を言い出したのはメンテだった。


 そんな事を言いながら、昼食の豚カツ弁当に入っている豚カツを、メンテが一口齧る。

「出ようかと思うんだ」


「いいね。メンテ、弓上手だもんね」

 真っ先に言ったのは、チュチュだ。


 最近、メンテとは仲がいい。

 ……アタシが勝手に思ってるだけかもしれないけど。


「いいね」

 と笑ったのはエマだ。

 ヴァルがずるずると緑茶を啜る。


「試合は1ヶ月後」

 メンテが心配そうな顔で、シエロに目を向けた。

「どうですか、先生」

 シエロがにっこりと笑う。

「いいんじゃないかな。サディークなら、日帰りで行くのもちょうどいい距離だろう。サポートも必要だろうから、みんなで行こうか」

「ありがとうございます」


 その日から、メンテは外で弓の練習に明け暮れた。


 ザシュ……!


 見学に来たチュチュの前を、弓がすごい速さで通り過ぎていく。

「す……ごい」

 練習を眺めているチュチュが、邪魔をしないようにあまり声を出さないようにしないと、と決心したのも束の間、うっかり声が出てしまう。

 演劇で使った時よりも大きな装飾の付いた弓と、大きな羽のついた矢。

 矢をつがえ、今までに見たことのない距離から、メンテは矢を射っていた。

 何本もの矢が、的へ突き刺さる。


 一息ついてチュチュのそばへ来たメンテに、チュチュが笑いかけた。

「綺麗な弓だね」

「だろう?」

 チュチュがそっと、壊れ物でも扱うかのように触れる。

 弓に装飾がしてあって、本当にしなるのか、実際に扱うところを見ていないと疑問に思えるほど豪華な弓だ。

「兄さんの弓なんだ」

「お兄さんの?」

「国から届けてもらったんだ」


 メンテの一族は、弓の名手が多い。

「……これに使ってる事がバレたら、“こんなお遊びにこんないい弓を使うなんて”、って、怒られそうだけどね」

 メンテはそういうと、小さく苦笑した。

 確かに、弓を持って森の中を駆けずり回り、獲物を捕らえるような使い方をしている人達と比べたら、こんなものお遊びかもしれない。

 何の障害物も無い場所で、動かない的を射るのだから。

 それでも、留学して魔術師になってまで、弓にこだわるのは、やはり家のことがあるからだろう。


 メンテだって、あの家の一員で居たいんだ。


「応援してるよ」

 チュチュは、メンテに微笑む。


 魔術はあまり、他人と比べられることがない。

 それぞれ使える魔術の属性が違うから、どうしても比べる事に反感を抱く者もいる。

 あまり、大会のようなものを開く事も少ない。


 なので、今、何かに勝ちたいと思っているメンテにとって、弓技の大会は都合がいいのだ。


 メンテは、チュチュの正面に立ち、チュチュをじっと見つめた。

「…………?」

 きょとん、とする。

 鳥が鳴いている声が聞こえて、なんとも長閑な午後だ。


「頑張るよ」


 え……?


 一瞬、その眼差しが余りにも真剣だったから、どきりとしてしまった。


「……うん」


 それほど、真剣に弓に取り組んでるって事だ。


 気を取り直して、チュチュは、メンテに微笑みかけた。

「うん。頑張れ」


「がんばるよ。ねぇ、チュチュ。ぼくの、勝利の女神になってよ」

さてさてまたラブコメ開始です。ここからはメンテのターン!

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