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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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67 この気持ちは仕舞い込んで

 シエロは、息を一つつくと、応接室のソファの上で、向かいのソファを眺めた。

 向かいのソファでは、ヴァルが魔術書をテーブルの上に置いて、すっかり眠ってしまっている。


 僕は、他人とちゃんと向き合う事ができない。

 どうしても、僕に関わる人間を、幸せにできると思えない。


 それは、呪いのようだった。

 関わる人間を、不幸にする呪い。


 周りの人間は、善良な人間ばかりだ。

 その人たちは、幸せにならないといけない。

 だから、僕と関わらせるわけにはいかない。


 ロサ家の人間も。

 ヴァルも。

 学園のみんなも。


 シエロは、呑気に眠るヴァルの方を見た。

 そんな呪いにかかってしまった何よりのきっかけは、この男が死んだせいなんだけど。


 見れば見るほど、同一人物だと思わざるを得ない格好で寝ている。


「…………」


 以前より子供のようで、それでいて、以前より大人になった。

 居なくなったはずのあの人が、目の前で成長していく。

 16歳になったヴァルは、どんどん思い出の中のあの人に似てきていた。


 ……身長、思っていたより低いな。


 そう思うと、「ふっ」と笑えてくる。


 どこからどう見ても、あの人と同じ人間だ。


 仕草。

 視線の投げ方。

 顔つき。

 言葉。

 人との関わり方。


 こんな寝ている姿まで。


 何処を取っても、本人でしかない。


 なんで死んだんだよ。


 そんな、投げやりな言葉も、今隣に居られるから言える言葉だ。


 あのまま一人になっていたら、今頃僕はどうなっていただろう。

 そんな事を考えるだけで、泣きたくなる。


 陽の光の中、シエロはいやに手触りの良いソファの上で、改めて横になると目を閉じた。


 この居心地の良い空間。


 僕には勿体無いものだ。


 いつ消えて無くなってしまうのかと、いつでも不安に思っている。


 ガチャ。


 そこで、突然扉の開く音がして、シエロはゆっくりと目を開けた。

「あー!先生!」

 扉の前に居たのは、チュチュだった。


「チュチュ」


 つい、笑顔になる。


 なんて暖かな子なんだろう。


 チュチュが、シエロのいるソファにのしかかる。

「探してたんだよ。せっかく美味しいおやつもらったから」

 そこで、ふいっと向かいのソファに目をやった。

「うっっっっわ。びっくりした。……ヴァル、いたの」

 仕方なく、シエロのソファから降りると、チュチュはヴァルを殴りにかかった。

「ヴァールー!!お茶の時間だよー!!」

 言いながら、頭をボコボコと殴る。

「ちょっ……!な……!痛ってぇよ。どんな起こし方だよ」

「大丈夫。エマなら、ヴァルがハゲでもいいって言うよ」

「大丈夫じゃないだろ。ハゲるような事はやめろ」


 ボサボサになった頭を撫でつけながら、ヴァルは一人、食堂へ向かった。


「先生も、行こ」

 チュチュが、シエロに手を差し出す。


「…………」


 見上げたまま、微笑む顔を眺めた。


 明るい日差しが、チュチュの笑顔を、更に煌めかせた。


 この笑顔が眩しいと思う気持ちには、今にも違う意味合いが張り付いてしまいそうで。

 そうなる前にこの気持ちは仕舞い込んでしまうのがいいだろう。


 君にも幸せになって欲しいから。


 この気持ちは心の中に仕舞い込んで、時々思い出しては、温かな気持ちになるくらいが丁度いいだろう。


 僕には、それがお似合いだ。

さて、過去編から現代へ戻って参りました!

また、ほのぼの恋愛ものとしてよろしくお願いします!!

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