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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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64/110

64 君が死んだ日(3)

 ランドルフとジークは、キリアンが団長として就任した第三騎士団と共に、翼竜が出現した方角に、馬で行くことになった。

 大魔術師は一人、壊滅したという町やその周辺の地域のサポートをするため、すぐに旅立つ事になった。

 シエロは一人、王都に残される。


 王都に残り、第二騎士団と王都を守るのが、シエロに割り振られた役割だ。


「どうして、僕だけ……、戦いに出られないんだよ」

 みっともなく見えるかどうかなんて、もう関係なかった。


 ランドルフとジークが、困ったような顔をした。

 二人で顔を見合わせると、ジークが一歩、前に出る。

「お前だって、分かってるだろ」


 わかってる。


 僕は身体が小さくて、馬で駆けろと言われても、それほどの速さは出せない。

 けど、優秀な魔術師であることには変わりない。

 二人について行くよりも、王都を守るほうがよほど役に立つ。


 そんなの僕にだって、わかる。


 僕だったとしても、そう采配するだろう。


 けど。


 この気持ちはなんだろう。


 そんな“理解”だけでは、納得できない。


 この気持ちは。


「ジーク……」


 返事をする代わりに名前を呼んだ。

 返事なんて意味がなかったから。

 名前を呼ぶ方が大切だった。


 ジークが、シエロと同じ目線になるよう、少し屈んだ。

 普段、そんな子供扱いをされたら、イラつくところだけれど。

 ジークが、シエロの頭にぽんと手を置いた。

 普段、そんな子供扱いをされたら、イラつくところだけれど。


 今だけは許してやる。


 ジークが、シエロに向かって、少しだけ優しい笑顔を向ける。


「戻ってきたら、また稽古つけてやるよ」


「…………」


 その顔を、泣きそうな顔で眺めた。


「違うよ……魔術対決するんだろ」


「そだな」

「ハハッ」と笑いながら、ジークが背筋を伸ばす。


「僕、負けないよ。ジークには。もう」


「楽しみにしてるよ」

 そう言ったジークの笑顔は、いつもの笑顔だった。


 泣きそうだったシエロの顔も、少しだけ元気を取り戻した。


 ばっと手を差し出す。

 握手の手。

 少し面食らったジークは、ニッと笑顔を作ると、その手を握り締めた。


「また会おう」

 強い瞳で、シエロがジークの手を握り返す。

「必ず」


 そう言って、二人の手は離れていった。

 ランドルフとジークが、後ろを向き、部屋を出て行く。


 二人の後ろ姿に、呟くように声をかける。


「お互い、無事で」


 シエロはそれからすぐ、一緒に戦う予定の第二騎士団と共に、城壁の上へ登った。

 大勢で周りを見渡すには、ここが一番都合が良かった。


 城壁から、幾人かの集団が出て行くのが見えた。


 鎧を纏った集団は、この国が誇る第三騎士団だ。

 その先頭で息巻いているのが、この第三騎士団の団長を務めるキリアン・コンスタン。

 その前に居るのが、王太子であるランドルフ・セラストリア。

 それに付き従うように隣に居るのが、ジークヴァルト・シュバルツだ。


 遠く、走って行くのを見送る。

 シエロは大きな赤い宝玉のついた杖を強く持ち直すと、その集団を眺めた。


 金色の髪と純白のマントが、強い風に揺れた。

過去編も残り2話です。

またほのぼのラブコメに戻ります。

これからもどうぞよろしくね!

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