64 君が死んだ日(3)
ランドルフとジークは、キリアンが団長として就任した第三騎士団と共に、翼竜が出現した方角に、馬で行くことになった。
大魔術師は一人、壊滅したという町やその周辺の地域のサポートをするため、すぐに旅立つ事になった。
シエロは一人、王都に残される。
王都に残り、第二騎士団と王都を守るのが、シエロに割り振られた役割だ。
「どうして、僕だけ……、戦いに出られないんだよ」
みっともなく見えるかどうかなんて、もう関係なかった。
ランドルフとジークが、困ったような顔をした。
二人で顔を見合わせると、ジークが一歩、前に出る。
「お前だって、分かってるだろ」
わかってる。
僕は身体が小さくて、馬で駆けろと言われても、それほどの速さは出せない。
けど、優秀な魔術師であることには変わりない。
二人について行くよりも、王都を守るほうがよほど役に立つ。
そんなの僕にだって、わかる。
僕だったとしても、そう采配するだろう。
けど。
この気持ちはなんだろう。
そんな“理解”だけでは、納得できない。
この気持ちは。
「ジーク……」
返事をする代わりに名前を呼んだ。
返事なんて意味がなかったから。
名前を呼ぶ方が大切だった。
ジークが、シエロと同じ目線になるよう、少し屈んだ。
普段、そんな子供扱いをされたら、イラつくところだけれど。
ジークが、シエロの頭にぽんと手を置いた。
普段、そんな子供扱いをされたら、イラつくところだけれど。
今だけは許してやる。
ジークが、シエロに向かって、少しだけ優しい笑顔を向ける。
「戻ってきたら、また稽古つけてやるよ」
「…………」
その顔を、泣きそうな顔で眺めた。
「違うよ……魔術対決するんだろ」
「そだな」
「ハハッ」と笑いながら、ジークが背筋を伸ばす。
「僕、負けないよ。ジークには。もう」
「楽しみにしてるよ」
そう言ったジークの笑顔は、いつもの笑顔だった。
泣きそうだったシエロの顔も、少しだけ元気を取り戻した。
ばっと手を差し出す。
握手の手。
少し面食らったジークは、ニッと笑顔を作ると、その手を握り締めた。
「また会おう」
強い瞳で、シエロがジークの手を握り返す。
「必ず」
そう言って、二人の手は離れていった。
ランドルフとジークが、後ろを向き、部屋を出て行く。
二人の後ろ姿に、呟くように声をかける。
「お互い、無事で」
シエロはそれからすぐ、一緒に戦う予定の第二騎士団と共に、城壁の上へ登った。
大勢で周りを見渡すには、ここが一番都合が良かった。
城壁から、幾人かの集団が出て行くのが見えた。
鎧を纏った集団は、この国が誇る第三騎士団だ。
その先頭で息巻いているのが、この第三騎士団の団長を務めるキリアン・コンスタン。
その前に居るのが、王太子であるランドルフ・セラストリア。
それに付き従うように隣に居るのが、ジークヴァルト・シュバルツだ。
遠く、走って行くのを見送る。
シエロは大きな赤い宝玉のついた杖を強く持ち直すと、その集団を眺めた。
金色の髪と純白のマントが、強い風に揺れた。
過去編も残り2話です。
またほのぼのラブコメに戻ります。
これからもどうぞよろしくね!




