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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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63/110

63 君が死んだ日(2)

 その日も、いつもと同じような日だった。


 大魔術師の部屋には、大魔術師と弟子たち3人が集って、いつもと同じような研究をしていた。

 それほど、いつも通りの日だった。


 その日の昼過ぎ、城がいつになく騒がしい事に最初に気付いたのは、ランドルフだった。


「誰か……、叫んでる」


 その呟きは決して大きいものではなかったけれど、その部屋にいた全員が顔を上げた。


「…………」


 確かに、遠く……、とても遠くの方で、誰かが叫んでいる。


 ランドルフが、いつになくしっかりとした足取りで、扉へ向かう。

 それに付き従うように、ジークが後に続いた。


 扉を開けると、大きな声が、部屋の中に飛び込んできた。

「伝令!伝令!」

 扉を開けたまま、二人が飛び出すと、部屋の中まで声が聞こえた。


「殿下!!」

「どうした?」

「翼竜です。翼竜が出ました」


「…………」


 その声はハッキリと聞こえた。

 その場にいた全員が、声を失った。


 大魔術師が立ち上がり、ランドルフ達二人と合流して王の元へと急ぐ。

 シエロも、その後へ続いた。

 杖を握る手に、ぎゅっと力が入る。


 正直、耳を疑った。


 確かに翼竜は、あと数十年で降りてくると言われていた。

 それだって、どう受け止めていいかわからない話だったのに。


 だって、その存在を覚えてる人間なんていない。


 誰もまともに見たこともない。


 そんな、物語じみた何かなんて、信じていない人も多かった。

 ……自分は関係ないと、タカを括る人も。


 けど、この状況はなんだ。


 騒がしく人々は走り回り、そこここで誰かが叫ぶ声が聞こえる。


 本当に居たのかという驚きと、まだ夢でもみているんじゃないかという拒絶と。

 色々なものがないまぜになり、また杖を持つ手に力が入る。


 会議室に入ると、大勢の人間が大きなテーブルの周りに集まっていた。


「父上」

 ジークが、王の側近である父に声をかける。

「ああ。翼竜が出た。大陸の端、西の港町だ。町は壊滅だと伝わっている」

「壊滅って……」

「急ぎ、騎士団を送ったが、全てが混乱している。なんせ、予兆も何もなかったからな」

「…………」


 テーブルの上に、広げられた地図。

 王がそれぞれの部隊に仕事を振り分け、大勢が部屋を出入りする。


「伝令!伝令!」

 部屋の外で、また新しい情報を持つ兵が、駆けずり回っている。


 ……これが戦いなのか。


 これが、戦いだっていうのか。


 こうしている間にも、本の中で見た怪物が、何処かで人を殺しているかもしれないのか。


 頭の中を整理する暇もないまま、事態がどんどん進んでいく。

 口を挟む余裕もなく、大魔術師たちは、バラバラの部隊に配属になった。


「どうして……」

 杖を握る手に、力が入る。

この物語のボスであり、精霊たちがこぞって持ち上げる存在といえば、やはり翼竜なのです。

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