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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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54 新しい場所(4)

 どさっ。


 シエロが、後ろへ倒れ、尻餅をついた。


「…………!」


 驚愕の顔のまま、地面を触る。


 こんなところで死ぬんだ……!

 誰からも見向きもされないまま……。


 熱い……!熱……っ!


「…………」


 いや、熱く……ない?


 キョロキョロと辺りを見回す。

 手のひらに、草と土の感触があることに気付く。

 3人に見下ろされ、呆然と座り込んでいる自分に気付く。


「ほっほ」

 大魔術師が、満足そうに笑う。

「そんな状況でも杖を離さぬ心意気。やはり、弟子にしてよかったわい」


「大丈夫かい?ジークが馬鹿なことするから」

 手を差し出し、助け起こしたのはランドルフ。

 ジークは、ランドルフの後ろでしらっとした顔をしていた。


 あの炎が幻だった?

 いや、あの熱さは本物だ。

 つまり、一瞬で炎を消せるってことだ。

 燃やさないものをきちんと選んで、炎の海を作れるってことだ。

 何より、あの速さ。


 そんな……高度なこと……、出来るなんて。

 僕は……あいつに手も足も出なかった。


 ランドルフの手を掴み、立ち上がる。


「そんな新人いじめみたいなことして恥ずかしくないの?」

 出来るだけツンと。

 出来るだけ、自信たっぷりに喋る。


 本当に、気に入らない奴ら。


 あんな奴が、僕より上だっていうのか。


 その日以降、魔術師の弟子だというのに、あまり魔術を見ることはなかった。

 毎朝大魔術師の部屋へ入り、そこで“研究”の手伝いをする。

 手伝いといっても、ほとんど雑用。書類整理だ。

 それも、『店舗拡充計画』だの『温泉施設でのサービス適用』だの、まとめている書類は、どう見ても商売関連。

 こっちは視察が必要なもの。

 こっちは、要連絡、と。

 デスクの上で仕分けをしながら、チェックしていく。


 魔術の権威が、“研究”と称してそんな書類ばかりなんて……。


 なんだかどうしても、騙されているような気がしてしまう。

 本当に魔術師の塔に入ることができた。

 本当に、家を出て城に住むことができた。


 けど、あの人は?


 大きなデスクで、ニコニコと何か考え事をしている老人の方をチラリと見る。

 ランドルフとジークは、王太子としての仕事もあるため、毎日はここに居ない。

 今日も、この大きな部屋に、大魔術師と二人きりだ。


 大魔術師と言われているけど、魔術は見たことがないし。

 家族は居なさそうだし、あまり誰かと仲良くしている気配もない。

 ニコニコしている時が多いけど、それがまた胡散臭い。


 あの歳なら、実際にもう魔術を使うこともなくてもおかしくはないけど……、研究内容も()()って、どういうこと?

 というか、実際いくつなんだろう……。


 王太子と、あれだけの魔術が使える王太子の側近を騙してるんじゃないだろうな……。


 ため息を吐きながら、シエロはまた大量の書類に向かった。

さてさて、まだまだほのぼの魔術師日常は続きます!

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