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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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47/110

47 外にあるもの(2)

「ここが、魔術師の塔じゃ」

 大魔術師に連れられて来たのは、王都は王城すぐの場所に位置する、魔術師の塔だった。


 一歩足を踏み入れると、太陽の光が遮られ、厳かな廊下が現れる。

 部屋の中を覗くと、子供達が輪になって、魔術の訓練をしていた。

「魔術は、信頼が大切だ。魔術をもたらす精霊を信じること。想像し、描き、実現させる」

 魔術師らしい中年男性が、魔術について話している声が聞こえる。


「ワシの弟子になると、必然的にこの魔術師の塔に所属してもらうことになる」

「……ここに住むんですか?」

 両側は扉ばかりで窓のない廊下を、シエロはキョロキョロと見回した。


「ここにももちろん部屋は貰えるが、どちらかと言えば研究室じゃのう。ワシと弟子達は城に住んでおる。弟子になれば、城に一室もらえるじゃろう」


「…………?」


 大魔術師の弟子といえば、王太子にその側近だ。

 城に住んでるのは当たり前だろう。


 なんだか、胡散臭く思えて来た。


 その日1日の終わりには、最後に大魔術師はにっこりと笑い、

「いい返事を期待しておる」

 と言葉を添えた。


 一人、とぼとぼと街の中を歩く。

 屋敷の近くまで来たところで、どこかのメイドらしき婦人達の噂話が耳に聞こえてくる。


「最近、子供の売り買いが流行ってるんですって」

「らしいですね。なんでも、名のある貴族が、愛でる為の子供を買い集めているとか」


「…………」


 もし、大魔術師に、そんな趣味があったら?


 もし、外に顔の知られていない僕が、何をしてもいいと思われていたら?


 閉じ込められて。


 殺されて。


 そんなことだってあるかもしれないんだ。


 家に帰ると、門の内側で、父に出会った。

 ……しまった。正門から入るんじゃなかった。

「シエロ」

「ご機嫌よう、父様」

 実に、2年ぶりの再会。

 けれど、そうとは思えないほどの、簡素な再会。

 そのまま、すれ違う。


 この程度なんだ。

 僕は、父にとっても。


 すれ違いざま、振り向いて、父に声をかける。


「大魔術師の弟子に、なろうと思います」


 試すような言葉。

 決心なんて、まだついてないのに。


 心臓が、脈打つ。

 声をかけるだけで、こんなに緊張するなんて。

 家族なのに。

 家族だったのに。


 それなのに。


「そうか」


 と、それだけを言い、父は門の外へと出て行った。


 2年ぶりに見かける執事やメイドが、その後に付いていく。


「…………」


 もし、父様や母様も、同意の上だったら?

 それで僕は、売られてしまうのかもしれない。


 ここには居なくていい人間だから。


 居ない方がいい人間だから。


 消えてしまったら、きっとみんなも、安心して暮らせるんだろう。


 外向きには、魔術師を目指す上で、事故に遭ったなんて、言われて。


 自然と、部屋へ向かう足が、早足になる。


 部屋の中は薄暗く、ただ、窓からうっすらと差し込む仄かな陽の光が、鏡に反射し、そこだけが明るい。

 鏡に映るシエロは、今にも泣きそうだった。


 嫌な顔をしている。


 なんとか纏めた髪も、どことなくバサバサと長く伸びている。


 ……こんなザマじゃ、そりゃあ、捨てたくもなるよね。


 自虐的な言葉ばかりが浮かんでは、漂う。

 暗い部屋の中、その恐怖にしばらくうずくまっていた。


 それでも、ここから出ないといけない。

 あの手を、取るしか道は残されていなかった。

シエロくん(10)から見たら、おじいちゃんはやっぱりちょっと、胡散臭かったのかもしれませんね。

おじいちゃんは多分、外見ずっと変わらないんでしょうね。

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