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抜剣少女は魔術教師に恋をする  作者: みこ


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46/110

46 外にあるもの(1)

 一人、離れで過ごすようになってから、2年の月日が流れた。


 相変わらず、魔術の研究だけを行なって過ごした。

 金色に輝く髪も、切ることもなく伸び放題で、背中まで伸びた髪を雑に纏めただけにしていた。


 コンコン。


 ある朝、朝食が乗ったワゴンを運んできたメイドが、食事のこと以外で口を聞いた。

「こちら、お手紙になります」


「…………」


 無言で受け取る。


 ここに運ばれる手紙には、嫌な思い出しかない。


 メイドが出ていってしまってから、晴れた窓辺のテーブルにセットされた朝食の前に、いかにも面倒だという体で座る。

 オレンジジュース。

 サンドイッチ。

 果物。


 ……朝からのサンドイッチは、喉が詰まるから嫌だな。


 それでも、黙々と食事をつつく。

 その合間に、パンだらけの手で、手紙の封を開けた。


 中を開けると、随分と達筆な文字で、『大魔術師マルー』と書いてある。


「…………?」


 何となしに開けた封の印章を、もう一度よく見た。

 確かにそれは、魔術師の塔から送られた手紙であるらしかった。

 手紙を見直す。


 それを書いたのは、どうやら大魔術師マルーで、手紙には、シエロに会いたいと書いてあった。


 大魔術師といえば、精霊とも交信があるとも噂される、この国切っての魔術師じゃないか。

 なんでそんな人間が、僕に用事があるっていうんだ。

 こんな……、引きこもりの。


 不可解だったけれど、このまま魔術師を目指すならば、無視するわけにはいかない。

 塔から……、それもこの国一番の大魔術師からの手紙を無視すれば、今後魔術師への道は閉ざされるかもしれない。

 何と言っても、シエロには魔術しか生きる道が無いのだから。


 走り書きのような返事を書き、それから、メイドが朝食の片付けに来たのを見計らって、声をかけた。


「セイス」

「はい」

 朝食の皿を片付けていたメイドが、くるりと静かに振り返る。

「これを、塔に届けて。大魔術師が来るらしいから、来客の準備を」

 そう言うと、メイドが一瞬キョトンとした顔をしたあと、「分かりました」とすんなり言って、手紙を受け取った。


 その日の午後、大魔術師はすでに、シエロの目の前に居た。

「…………」


 本当に、大魔術師だ。


 目の前の大魔術師は、いかにもなとんがり帽子を被り、古木でできたような細い杖を手に持っていた。


「コホン」

 これ見よがしに咳払いを一つして、大魔術師は話を始めた。

「お前さんは、優秀な魔術師だと聞く」


 ……こんな引きこもりが?


 シエロはその言葉を否定したかったけれど、わざわざそれを言葉にすることはしなかった。


「それでな、ワシの、弟子になって欲しいと思っているのじゃ」


「はぇ…………?」


 変な声が出てしまう。


 弟子。


 大魔術師は、なかなか弟子を取らないことで有名だった、らしい。

 それをシエロが知ったのは、大魔術師が初めての弟子を取ったと話題になったその時だ。

 この国の王太子と、その側近を弟子にした、その時。

 それまで弟子を取ったことがなかったとは……。


「突然な話だとは理解している。まず、塔を見るだけでも、どうかな?」


 確かに、この申し入れを受けてしまうと、今までと同じ生活はできなくなる。

 魔術師の師弟関係は、一緒に住んでいる事も多い。

 けれど、シエロにとってそれが、またとないこの家を出る好機だった。

さてさて、シエロくんの過去話続きます。

とうとうおじいちゃんが出てきましたね!

ここから少しずつ明るくなってくるかな?

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