34 四角関係(2)
そんなわけで、翌日の午後、4人は町へ向かった。
町の中を4人で歩く。
劇団が来ているためか、いつもよりも出店が多い。
翼竜による町の復旧も進んでおり、町の中は賑やかだった。
チュチュがおずおずとシエロのマントを掴み隣を歩くと、シエロは前を歩くヴァルをじっと見た。
その視線を煩わしそうに、ヴァルはエマの隣を歩く。
エマはその光景に苦笑するしかなかった。
「混んでるね」
「滅多にないからね、劇団が来るなんて」
後ろの方ではあったけれど、なんとか席を取った4人は、結局、前の席にエマとチュチュ、後ろの席にヴァルとシエロが座った。
前の席の二人は、出店で売っていたフライドポテトを仲良く分け合って食べていた。
「先生もどーぞ」
深めの紙皿に山盛りになったポテトを、チュチュがシエロに差し出した。
「ありがとう」
その一瞬で、ヴァルが手を出してきて、パクパクと数本のポテトがヴァルの口の中に消えて行く。丁寧に一本ずつ食べるものだから、見た目だけは気品がある。
「あっ!ヴァル食べすぎ!」
「また今度買ってやるから」
「そういうことじゃないの!先生に渡したの!」
「じゃあ、俺がシエロにも買っといてやるから」
何故かヴァルがドヤ顔を作る。
「アタシがあげようとしたんだけど」
チュチュは頬をぷっと膨らませる。
そんな風に騒いでいるうちに、舞台が始まった。
水の精霊セラと少年との出会いを描いた古の伝説をもとにしたコメディだ。
楽しく笑いをとりつつ、精霊のことがよく調べられており、真面目な要素も欠かさない。
ヴァルとシエロは演劇などに期待はしていなかったが、二人ともけっこう真剣に見ることになった。
特にシエロは水の精霊の祝福を受けているだけあって、水の精霊に関する物語は興味があるようだった。
「セラの物語だけでなく、『島を渡る舟』についての伝承もうまく交えてあったね」
「確かに、少年が海を渡ったと考えると、出会いが自然になるな」
「時代背景もぴったりだし、ただのコメディとして見るのは勿体無いね」
「この劇団、パパを訪問したことがあるらしいんだ」
「コンスタンを?いったいどうして……」
シエロが興味深げの顔を上げる。
「途中、少年が馬に追われてる人に会うでしょ。あの辺りの場所の話で」
「あのあたりが侯爵領だってことか……?じゃああのおじさんがもしかしてコンスタンの先祖……?」
「えっ!?アタシのご先祖あのヒゲのおじさん?……ぅえええ!?」
そこで、チュチュの腕の中に、大きな紙袋が飛び込んできた。
「え、何これ。めっちゃいい匂い」
開けると、中に入っていたのは大量のフライドポテトだった。
渡してきたのはもちろんヴァルだ。
「仲良く食えよ」
どうやら本当に、ポテト二人分を買ってきてくれたらしい。
「ふふっ」
思わず笑いが溢れる。
「ヴァルはこういうところ本当に真面目だよね」
笑いながら食べる。
「美味しい〜〜〜〜〜!はい、先生も」
「ありがとう。ヴァルはこういう時はお兄ちゃんなんだよね」
呆れた声でシエロがポテトをつまんだ。
先生と仲良くポテト食べられるなんて、ヴァルのおかげで得しちゃった。
「へへへ」
見上げると、シエロが、「ん?」という顔でこちらを見た。
嫌そうな顔じゃない、普通の顔だ。
かわいい…………。
「せーんせ」
「どうしたの?」
「先生と一緒にいられて嬉しいの!」
するとシエロは少し驚いた顔をして。
「そう」
と一言だけ呟いた。
みんなでワイワイしているのいいですよね!




