35 四角関係(3)
「あれ?」
チュチュが周りを見渡す。
「エマ達がいない」
「……そうだね」
また二人で今日の劇について話していたところ、エマとヴァルが居なくなっていることに気がついた。
今日は徒歩で来たし、待ち合わせ場所というものもない。
シエロがにこやかに言う。
「まあ、迷子なんて事もないだろうし、デートしたかったんだね。学園には戻るだろうから、二人でのんびり帰ろうか」
その甘美な誘惑。
エマ達は大丈夫かな。心配ではあるけれど。
二人で歩けるなら二人で歩きたい。
……二人で歩いていいのなら。
「うん。あーんなラブラブカップル置いて帰ろー」
二人、商店街へ向かう。
景色はぼんやりとオレンジ色に染まりかけていた。
いつも以上に人出が多い。
その人出を見た商店の人達が店を出すので、来る時よりも出店が増えている。
「すごーいにぎやか!」
チュチュの目がらんらんと光る。
「メンテにお土産買っていく!リナリにも!」
そう言って、チュチュはシエロの腕を引っ張った。
「はいはい」
「あれ!美味しそう!」
そこでチュチュが向かったのは、わたあめの店だ。
「わたあめじゃお土産にならないよ。双子に渡す時、棒だけになってるよ」
「くーださーい!」
あーん、と一口。
「先生、美味しいよ。はい!」
「え…………」
わたあめを押し付けられ、引いてしまったシエロだったけれど、仕方なく、わたあめを一口いただいた。
「うん。……わたあめなんて初めて食べたよ」
え……。
先生、ちょっと嬉しそう?
そんな嬉しそうな顔を見てしまったものだから、チュチュもつい張り切ってしまう。
「あれ!あれおすすめだから!!」
と、シエロの腕を引っ張って歩いた。
チュチュが向かったのは、ケーキ屋が出しているドーナツの出店だった。
「美味しいよ〜!ほら」
沢山買った紙袋からシエロに一つ差し出すと、チュチュも一つ口に咥える。
「うん。美味しい」
そう言ったシエロの顔が、少し綻んだ。
や、やっぱり、先生ちょっと嬉しそうだ。
こんな顔を見せられるとドキドキしてしまう。
張り切りすぎて、商店街を抜ける頃には、チュチュは両手いっぱいに食べ物を抱えていた。
鯛焼き、たこ焼き、焼きそば、オムライスまである。
それに、リナリが帰ってくる時のために、小さな紅茶の葉が入った缶を3つ買った。
「急いで帰らなきゃ!メンテが晩ご飯作る前に!!」
思わず早足になるチュチュを、シエロが笑いながら追いかける。
「まったく……雰囲気も何もあったもんじゃないな」
「せーんせ!何か言った?」
「いいや。そんなにドーナツがどこに入ったのかなって言ったんだよ」
「な……っ!?晩ご飯の前だから、ドーナツは3つで我慢したよ!?」
「ははっ」
「先生!たこ焼き冷めちゃうから急いで!」
振り返ったチュチュの足は、すっかり駆け足モードだ。
そんなチュチュを見たシエロが、また笑った。
「メンテのために急ごうか」
「うん!超特急〜〜〜〜〜〜!!!」
まるでお祭りのようになってしまった商店街。
食べ物のお店ばかりではないのですが、ちょうどそんなお店ばかりの場所を通ったようです。




