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アウトサイダー  作者: 君島極
第三章:交差する運命 |  第一節:揺らぐ日常、芽吹く力
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第3話:教室になる音

――次の日/インサイダー養成学校


橘先生が教卓へ立ち、出席確認を始める。


名前が呼ばれるたび、教室のあちこちから返事が返った。


昨日より会話は増えている。


それでも、どこか硬さの残る声ばかりだった。


机の位置も窓からの光も昨日と同じなのに、返事の音だけが少し近く聞こえた。


その時――


ガラッ!!


勢いよく扉が開く。


「す、すみませんっ!!」


息を切らしながら飛び込んできたのは、短く髪を切った男子生徒だった。


橘先生が片眉を上げる。


「……柳。二日目から遅刻か」


「いや、その……興奮して全然寝れなくて……!」


数秒の静寂。


そのあと、教室のあちこちから笑いが漏れた。


「わかる」

「俺も寝不足」

「昨日やばかったよな」


椅子の背にもたれる音が、あちこちで小さく重なった。


彰も思わず口元を緩めた。


(……なんだ。みんな同じなんだな)


昨日は、全員が“すごい奴ら”に見えていた。


でも今は違う。


同じように緊張しながら、この教室へ来ている。


彰は机の端へ置いていた指を、そっと緩めた。


「……まあいい。今日から校内見学に入る前に、まずは簡単に自己紹介をしてもらう」


教室が少しざわつく。


「名前と、目標でも話せ。順番に行け」


前列から、一人ずつ自己紹介が始まっていく。


最初は緊張した声ばかりだったが、ぎこちない笑いや短いやり取りが混ざるうちに、返事のあとへ小さな笑い声が残るようになっていた。


机の間に、少しずつ知らない声が増えていく。


やがて――


凛が静かに立ち上がった。


蒼氷色の瞳が、教室をゆっくり見渡す。


「神楽月凛です。……誰かを守れる力を、もっと磨きたいと思っています。よろしくお願いします」


大きな声ではない。


けれど、不思議と教室全体へ静かに届いた。


その余韻が残る中、次に征四郎が立つ。


「六菱征四郎だ。まだ未熟だが、誰にも負けるつもりはない。……よろしく頼む」


征四郎は無駄のない口調で言い切る。


何人かが背筋を正し、机を叩いていた指が止まった。


続いてキャサリンが立ち上がった。


金髪を揺らしながら、軽く笑う。


「キャサリン・グラントよ。せっかく同じクラスなんだし、仲良くしてくれると嬉しいわ。よろしくね」


教室のあちこちで小さな笑いが漏れた。


その空気のまま、陽菜が立ち上がる。


「虹咲陽菜です。みんなを支えられるインサイダーになりたいです。よろしくお願いします!」


近くの席で、小さく頷く生徒がいた。


凱は立ち上がると、歯を見せて笑った。


「獅子堂凱。目標は最強。以上!」


「短っ!」


誰かのツッコミに、教室が笑いに包まれる。


自己紹介は、前の席から順番に続いていく。


そして、やがて彰の番が回ってきた。


一瞬だけ、視線が集まる。


「……龍胆彰です。まだ未熟だけど、ちゃんと戦えるインサイダーになりたいと思ってます。よろしくお願いします」


言い終えた瞬間、机の端を押さえていた指が離れた。


自己紹介が終わる頃には、教室の声も少しずつ増え始めていた。


橘先生は時計を確認し、


「見学前に十分休憩を入れる。必要ならトイレも済ませておけ」


そう言い残して教室を出ていく。


扉が閉まった瞬間、椅子を引く音が一斉に重なった。


「よろしくな!」

「どこ出身?」

「寮ってどんな感じなんだろ」


あちこちで、そんな声が飛び交い始める。


まだぎこちない。


けれど、それぞれが少しずつ距離を縮め始めていた。


彰も近くの席の生徒へ軽く頭を下げる。


「よろしく」


「ああ、よろしく」


凱はすでに隣席の男子と笑いながら話していた。


「いやマジで昨日寝れてねぇんだって!」


「わかるわかる!」


陽菜も女子たちへ囲まれながら、小さく笑っている。


その様子を見て、彰は小さく息を吐く。


机の間を行き交う声が、昨日より少しだけ近く聞こえた。


(……なんか、ちゃんと学校なんだな)


数分後。


再び扉が開き、橘先生が教室へ戻ってくる。


ざわめきがゆっくり静まっていった。


「これから校内見学へ向かう」


橘先生は教室全体を見渡し、静かに続ける。


「ここから先が、お前たちが三年間を過ごす舞台だ。しっかり見ておけ」


先生を先頭に、生徒たちは列を作って廊下を進んでいった。


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