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ドラゴ・ニック  作者: なんたい生物
死神12騎士編第四章炎魔再熱
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第38章無敵狂想曲

青年ユッカはホワイトドラゴンから「開かずの刀」を受け取ると、傷ついたシャレンティエンさんを支え、即座に安全な場所へと退避を始めた。


僕も二人を追いかけて追撃を阻止しようと駆け寄る。しかし、その視界を遮るように異形の少女が立ちふさがり、大楯で僕の進行方向を力任せに阻んだ。


「ねぇ、この子が黒竜(こくりゅう)であってる?」

少女が背後の男へ尋ねる。

ルシフェルは答えた。

「そうですよ」


少女の口元が、仮面の奥で一瞬、不気味に歪んだ。

「そう……」


次の瞬間、少女の強烈な蹴りが僕の腹部を捉えた。

「黒炎斬り!!」

僕は即座に刀へ黒炎を纏わせ、切り裂こうと振り下ろす。だが、少女の重厚な防具に阻まれ、刃は深く通らず受け止められるのが精一杯だった。


「甘いね……」

刀を受け止めた足とは別の足が、横からしなるように僕の側面を蹴り飛ばした。


「グッ……!」

地面を滑りながら姿勢を整える僕を見下ろし、少女は冷たく告げる。

「黒竜……話は聞いてるよ。氷魔竜(ひょうまりゅう)、雷魔竜(らいまりゅう)、砂魔竜(すなまりゅう)……魔龍(まりゅう)たちを倒してきたんだよね? 君。」


僕は即座に間合いを詰め、刃を振るう。だが少女は手にした剣で軽々とそれを受け止めた。

「弱い……。君と戦うの、もう飽きちゃった。さっさと殺すね……」


「人を勝手に弱いと言うな!!」


僕は受け止められた刀から咄嗟に手を放すと、その刀の柄を足で蹴り上げた。宙で円を描いて回転する刀。僕は跳躍し、空中からその柄を掴んで渾身の斬撃を振り下ろした。


「魔能……ヴァルケイ×∞!!」

少女は回避しようともせず、無数の光の斬撃を解き放つ。

僕は空中でおしよせる斬撃を必死に刀で弾き、切り裂きながら突き進んだ。そして、少女の胸元へ向けて刀を深く突き立てる。


少女は余裕の笑みを浮かべていた。

無敵の肉体と鎧が、黒炎(こくえん)を纏った僕の刀など弾き返すと思っていたのだろう。

だが

刃は浅く、しかし確実に少女の肉体を貫き刺さった。


それでも少女は笑っていた。

しかし、貫いた刀から伝わる熱力が次第に異変を見せ始める。黒炎(こくえん)の熱度が爆発的に跳ね上がっては弱まり、再び高まるという波を繰り返す。その波状攻撃の熱が、彼女の体を内側から焼き焦がしていった。


味わったことのない激痛に、少女の表情が引きつる。

「……!?(なに……この痛み……!?)」


少女は狂乱したように刀を掴み、引き抜こうとした。横に一閃して切り裂こうとする僕の腕を、彼女の手が力任せに掴んで拘束する。


激痛の中、少女の頭の中に過去の惨劇が蘇っていた。

戦火の渦中、二人の大切な者を守ろうとして命を落とした、あの日の絶望。


「死にたくない……死にたくない……! 守るんだ……二人を、みんなを!! ルシフェル様にいただいたこの命……もう捨てたくない! 私は死にたくない!!」


少女の叫びに応ずるように、背中の翼がさらに巨大化し、枚数を増やして凶悪な異形の姿へと変わっていく。

完全な化け物と化した手を、彼女は僕へと向けた。その手の中に、魔血(まけつ)が圧縮されていく。


逃げようと足に力を入れた瞬間、少女の投げた剣が僕の腕を撃ち抜いた。

釘で刺された紙のように、僕の腕は後ろの大木へと深く縫い付けられる。刺さった腕から鮮血が激しく吹き出した。回避は不可能だった。


「黒ドラくん!!」

異変に気づいた里見さんが駆け寄ろうとする。


「行かせない……ダークネスボール」

ルシフェルが冷淡に黒い球体を放つ。

ホワイトドラゴンが咄嗟に割り込み、その弾を正面から受け止めた。


「ホワイトドラゴン!!」

里見さんの叫びが響く。


「大丈夫だ……こいつらは俺が止める」

ホワイトドラゴンは吐血しながらも、その場に仁王立ちになった。

「お前も、黒ドラも仲間だろ……! お前は黒ドラを助けに行け。心配は無用だ、俺は一人でも強い。……だが、ピンチの仲間を助けるのは当たり前だろ! 俺は立ってる。黒ドラは動けない。俺に構わず行け!! ここはなんとかしてみせる!!」


ホワイトドラゴンは血を流しながらも銃を構え直し、二人の敵へ向けて弾丸を連射した。二人はそれを余裕で回避する。

「そんな弾、当たりませんよ……」


その隙に、里見さんは地面を蹴り、弾丸のような速度で僕のもとへ走った。


「死ね……! 魔能デッド・グルーム……!!」

少女の手から、僕へ向けて灰色の球体が放たれる。


その直前、目の前に飛び込んできた

里見さんが、その巨大な球体を思い切り蹴っ飛ばした!


「ていやああああ!!」


軌道を大きく変えられた球体は遙か遠くの森へと飛んでいき、凄まじい爆発を起こして一瞬で木々を枯木になった。


「ハァ……ハァ……」

蹴り飛ばした里見さんの足から、だらりと血が流れ落ちる。


少女はすぐさま接近すると、里見さんの頭部を掴み、力任せに大木へ叩きつけるように投げ飛ばした。その瞳は、もはや獲物を追い詰める野獣そのものだった。


「死ねぇぇ!!」

少女が剣を抜き、倒れた里見さんへ襲いかかる。


僕は腕の剣を強引に引き抜き、ヨロヨロと立ち上がると、背後から

「魔能黒翼の爪紅(こくよくのつまべに)!!」

漆黒の炎を纏う翼を広げ、手に集中し、黒い炎の爪になる。

少女の身体をガッチリと抱きかかえて拘束した。

「里見さん、今です!!」


「離れろ……!!」暴れる少女。


里見さんは血の滲む足を地面へ力強く踏み鳴らし、突撃前の闘牛のように溜めを作った。

「魔能アジュガメリア!!」


大きくホップし、空中で超高速の連続蹴りを叩き込むと、最後は強烈なアッパーカットで少女の巨体を上空へと打ち上げた。


「魔能エクリプスルーチェ!!」

空中へ舞い上がった少女が、上空から無数の細いレーザー照射を繰り出してきた。


「黒ドラくん、まだ動ける!?」

「えっ、はい!」

「よし、私に動きを合わせて! ぶっつけ本番だよ!」

「何をするんですか!?」

「合体魔能さ!! 私と黒ドラくんの魔能を合わせて、強大な一撃を作るの! やるよ!」


里見さんは空中のレーザーを回避しながら急降下し、少女へ向けて凄まじいかかと落としを繰り出す。

僕も落ちてくる落下地点を予測して素早く移動し、自分の刀を拾い上げた。


落ちてくる少女を視界に捉え、刀に膨大な黒炎を纏わせて高速で振り回す。

周囲に吹き荒れる黒炎の渦。少女はその渦の真っ只中へと叩き落とされた。


だが、少女はなおも立ち上がろうとする。そこへ里見さんが即座に滑り込み、怒涛の連続蹴りを叩き込んだ。

さらに僕が炎の渦を刀身へと集約させ、巨大な黒炎の刃で二重三重に切り裂く。


二人による怒涛の二方向同時攻撃。

仕上げに、僕の足から溢れ出た黒炎が里見さんの足へと流れ込み、二人の足に漆黒の炎が激しく滾る。

タイミングを完全に合わせた二人の足が、少女の身体を捉え、背後の岩壁へと吹き飛ばした。


「「合体魔能・黒蓮華(こくれんげ)!!」」


轟音と共に激突する少女。

しかし、彼女はなおも立ち上がってきた。

「これで終わり……? なめないで……!」


その直後だった。

少女の身体の内側から、漆黒の炎が溢れ出し、全身を包み込むように激しく燃え上がり始めた。遅れてやってきた黒炎の暴走だ。


少女は身を悶えさせ、炎を払おうと必死にもがく。

「クソが……! クソがぁぁ!! 私は二人を、みんなを守る盾になるんだ! これっぽっちの攻撃、痛くも痒くもない!!」

狂乱しながら剣を振りかざす少女。


「まだ動くの!?」里見さんが息を呑む。


「やれやれ……あちらは随分と盛り上がっていますね」

ルシフェルは呆れたように頭を掻きながら、黒炎に包まれる少女を見つめた。


「まあ良いでしょう……これも時の運命。受け入れましょう」

クロノスは撃ち続けるホワイトドラゴンの懐へ一瞬で踏み込むと、その首を冷酷に掴み上げた。

ホワイトドラゴンは首を掴む手を振り払おうと必死に暴れる。


「残念……この程度、君のようなゴミと同じ価値しかないんですよ。あの時、さっさと殺しておくべきでしたね。竜と人間……」


首骨を叩き折ろうとしたその瞬間、二人の目の前に巨体が躍り出た。

目の前に現れたのは、アルマジロのような巨体に、古代生物アノマロカリスを思わせる禍々しい頭部を持った魔龍(まりゅう)

炎魔竜(えんまりゅう)だった。


「ウヴァアアアアアア……!!」


「……撤退しますよ」

クロノスが呟く。

「では、引き上げましょう。ラズグジエル、ここから去りますよ」

ルシフェルが少女の名を叫ぶ。


クロノスはホワイトドラゴンを無造作に放り投げた。ホワイトドラゴンは咳き込みながらもすぐに立ち上がる。

ラズグジエルと呼ばれた少女は、黒炎が消え去った全身焼け焦げた姿から、驚異的な再生力で瞬時に肉体を修復させていた。


「クソ……ッ!」

悔しげに吐き捨て、三人影の中へと姿を消していく。


「あとは頼みますよ、チェロス」

クロノスの声が響くと同時に、影の中から一領の不気味な鎧が姿を現した。


「解体! 解体!! また会えた、会えたなぁ! 魔能を使える人間!!」

鎧の怪人が怪しい声を上げ、僕たちへ襲いかかってくる。


同時に、炎魔竜(えんまりゅう)も咆哮を上げながら近づいてきた。

「ウヴァアアアアアア!!」


ホワイトドラゴンが即座に立ち上がり、魔龍(まりゅう)と鎧の足を狙って銃撃を浴びせる。

しかし、チェロスと呼ばれた鎧は弾丸を受けても無傷。炎魔竜(えんまりゅう)は巨体を丸めて球体になると、炎を吹き出しながらまるで火車のように転がり始めた。


「ヒャハハハ! 楽しい、楽しい!!」

チェロスは自らの身体を切り裂き、無数の分身体を生み出して押し寄せてくる。


里見さんが突撃し、連続蹴りで迎撃する。

「全員連れて帰る、帰る! そして解体! 解体!!」

僕も刀を振るい、分身体を次々と切り裂く。ホワイトドラゴンも的確に分身体の頭部を撃ち抜いていく。


「くっ、キリがないな!!」


その時だった。

転がりながら突進してきた炎魔竜(えんまりゅう)が、チェロスの分身体を踏み潰すと同時に回転を停止させた。

巨体を開いた炎魔竜(えんまりゅう)は、目の前にいたチェロス(ほんたい)の頭部を巨大な顎で丸かじりし、そのままバリバリと喰らい始めたのだ。


チェロスを喰らい尽くした瞬間、炎魔竜(えんまりゅう)の体から吹き出していた炎が変貌を遂げた。

どす黒い、禍々しい「黒炎」へと塗り替えられていく。


喰らった魔能(まのう)を取り込み、さらに凶暴化した炎魔竜(えんまりゅう)。

黒い炎を撒き散らしながら、再び球体となってこちらへ向かって転がり始めた。

「ウヴァアアアアアアアアアアアア!!」

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