第32章火山の島へ
骸滅竜の咆哮が消え、一夜が明けた。
翌朝、里見さんはようやく意識を取り戻した。鏡の中で出会った「ルポ」という少女のこと、彼女が抱えていた孤独、そして最期の感謝……里見さんはそれらを、静かにミカエルと僕たちへと語った。
「なるほど……。ただ、友達が欲しかっただけ、か」
ミカエルは深く腕を組み、窓の外を見つめた。
「その子がなぜ、あのような異形の怪物へと変貌したのか。……死神帝国の魔剣、そしてルシフェルの言っていた『光』の弱点。まだ分からないことだらけだな」
彼女は何かを思案するように目を伏せると、ふと顔を上げた。
「さて……。私はこれで失礼する。イェレミエルとも合流せねばならんしな」
ミカエルは足早に部屋を去っていった。
「さて、僕たちも準備を整えて出発しましょうか」
僕の言葉に、里見さんは「そうね」とベッドから勢いよく降りようとした。
「もう大丈夫なんですか? 無理は禁物ですよ」
「大丈夫だってば! ほら、こんなに元気!」
里見さんはぶんぶんと腕を振り回して見せたが、その顔にはまだ隠しきれない疲労が滲んでいる。
「念のため休んでおけ」
ホワイトドラゴンが、ぶっきらぼうに里見さんの肩を押さえた。
「準備は俺と黒ドラで済ませておく。お前はしばらく寝てろ」
「でも……!」
「ホワイトドラゴンの言う通りです。里見さん、今は力を蓄えておいてください。次は火山の島なんですから」
僕がダメ押しするように言うと、里見さんは観念したように「……分かったわよ」と再びシーツに潜り込んだ。
一方、街の外れ――。
ミカエルは、一人佇むイェレミエルの背中を見つけて声をかけた。
「イェレミエル! どこへ行くつもりだ」
イェレミエルは振り返らず、低く冷めた声で答える。
「……天竜界に戻るよ。ゼロス様に、直接聞かなきゃいけないことができた」
「……? ゼロス様に? 一体どういうことだ。任務はどうする」
「詳しくは話せない。けど、このままだと世界が取り返しのつかないことになる予感がするんだ」
イェレミエルはいつもの能天気な笑みを一切消し、何かに憑りつかれたような足取りで歩き始めた。
「待て、イェレミエル……!」
ミカエルはそのただならぬ気配に息を呑み、彼女を追って駆け出した。




