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ドラゴ・ニック  作者: なんたい生物
死神12騎士編第三章鏡隠しの章
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間話21孤独の鏡姫Ⅳ 鏡面の月

― 次元No.2

 タルタニア大陸 竜帝歴(りゅうていれき)28年 ―


獣竜種(じゅうりゅうしゅ)は普通の人間や、竜人(りゅうじん)だと認められなかった。

タルタニア大陸の獣竜種(じゅうりゅうしゅ)の頂点に立つ『妖狐ようこ族』と、誇り高き『炎帝竜えんていりゅうの一族』。両者の不仲を危惧した天竜界(てんりゅうかい)は、和平の証として炎帝竜(えんていりゅう)の一族の者を、妖狐族(ようこぞく)へと嫁がせるよう命じた。


しかし、炎帝竜(えんていりゅう)側の真意は冷酷だった。

もともと病弱だった妹は、獣国(ししこく)へ着くとすぐに病に倒れた。彼らの狙いは、妹の死を「妖狐族(ようこぞく)による毒殺」に仕立て上げ、正当な理由を持って戦争を仕掛けること。


母は、私を産み落とした2年後にこの世を去った。

母が死んだ瞬間から、私の居場所は冷たく湿った地下室へと変わった。


「汚らわしい炎帝竜(えんていりゅう)の娘め……」

「地下室から出てくるなと言っただろう!」


城の従者たちからの育児放棄。与えられるのは残飯以下の泥のような食事。

外に出ようとすれば殴られ、蹴られ、幼い体は常にあざで覆われていた。

ボロボロの服を纏い、言葉も教えられず、夜中にゴミ捨て場から拾った食べ物を啜る日々。

……友達が欲しかった。誰でもいい、私を「人間」として見てくれる誰かが。


そんな折、タルタニア大陸を揺るがす報せが届く。

炎帝竜(えんていりゅう)、暗殺。

晩餐会で毒を盛られ、何者かに刺殺されたという。

その情報聞き入れた妖狐族(ようこぞく)は緊急招集をする。戦争をするかどうかの…。

城内が騒然とする中、何も知らない私は空腹に耐えかねて調理室へ忍び込んだ。


「おい、ルポ。勝手な外出を認めた覚えはないぞ」


私の父であり獣国(ししこく)の城主に見つかり、私は震えながら逃げ出した。

追い詰められた先は、行き止まりの小部屋。

踏み込んできた城主に、私はいつものように殴られ、床に転がされた。


「親の仇の娘が、我が物顔で城を歩くな!」


城主が再び拳を振り上げた、その時だった。

背後から音もなく現れた金色のコブラが、城主の首元に牙を立てた。


「あが……あ、がが……っ」

泡を吹いて崩れ落ちる城主。扉の外にいた騎士たちも、同じように毒に倒れていた。

呆然とする私の前に、一人の女性が降り立つ。


「君を、死神帝国に迎えたい。……君には、魔剣の使い手としての素質がある」


言葉の意味は分からなかった。だが、女性が差し出した禍々しい「骨の剣」に、私は抗えない魅力を感じた。

女性は自分の腹部を指差す。

(……それを、体に刺せ)


私は言われるがままに、骨の剣を自らの体に突き立てた。

突き抜けるような頭痛と吐き気が全身を駆け巡り、意識が遠のく。


「……やはり。ルシフェルが見つけた適合者は、この子で間違いないようだ」


女性は苦しむ私を抱きかかえ、部屋の隅にある大きな姿見を指差した。

その鏡に触れた瞬間、私の体は吸い込まれるように「鏡の向こう側」へと消えていく。


追ってきた騎士たちの首に、女性が放ったガラスの破片が突き刺さる。

彼女は鏡を抱え、影の中へと静かに消えた。


それが、私が太陽の光を失い、「鏡の姫」として孤独な夜を歩み始めた最初の日だった。

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