表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴ・ニック  作者: なんたい生物
死神12騎士編第三章鏡隠しの章
52/60

第31章荒ぶる獣

咆哮を上げ、獣国の街を蹂躙する骨の竜。

暗黒大帝竜(あんこくたいてりゅう)様ぁぁぁ!! どこですか、どこにいるのですかぁぁ!!」


その狂乱を止めるべく、ミカエルが風を切って地を蹴った。

「何があったかは後で聞く……。今は、お前を止めるのが先だ!」

抜き放たれた刀が骨の装甲を叩くが、火花が散るだけで傷一つ付かない。


「この匂い……忌々しい『神竜(しんりゅうしゅ)』の同族か?わたくしはその匂いが、反吐が出るほど嫌いなんだよ……!!」

巨木のような足がミカエルを圧殺せんと振り下ろされる。

魔能燿華風月(ようかふうげつ)!!」

居合の一閃で迎え撃つが、あまりの硬度に刀身が震える。


「……っ、こいつの硬さ、尋常じゃない!」

「魔能バラック!!」

横から放たれた里見の衝撃波が、竜の足を強引に弾き飛ばした。

「助かった、里見……!」

「お礼は後。……来るよ!」


弾け飛んだ骨の破片が磁石のように吸い寄せられ、瞬時に足を再生させる。

「邪魔をするなぁぁ! 私はただ、あの方に会いたいだけなのにぃぃ!!」


「叫んでいる『暗黒大帝竜(あんこくたいてりゅう)』とやらが何者かは知らんが、これ以上の破壊は看過できん」

ミカエルの瞳が鋭く細まり、背後から燃えるような赤い尻尾突き出した。彼女の半竜化だった。

獣の如き瞬発力で、彼女は竜の懐へと潜り込む。


「死ね、神竜種(しんりゅうしゅ)!! 魔能眼闇光アイネスリヒト!!」

竜の全身から、空を覆い尽くすほどの闇の光線が降り注ぐ。逃げ場のない絶望的な物量。

だが、その光が僕たちに届く直前、輝く盾が空間を覆った。


「ミカエル、お待たせ!」

空から舞い降りたのは、六花の花冠を戴くイェレミエル。そして、彼女を追ってホワイトドラゴンも駆けつける。

「ホワイトドラゴンさん……!」

「……喧嘩の続きは後だ。まずはあいつを黙らせるぞ」


イェレミエルの加勢により、反撃の好機が生まれた。僕は里見さんに向かって叫ぶ。

「里見さん! 動きを止めます、手伝ってください!」

「分かったわ! 魔能ジャンプルピモネ!!」


里見さんが足元を攪乱し、僕は全力の魔能を両手に込めた。

「魔能黒翼の爪紅(こくよくのつまべに)!!」

漆黒の炎を纏う翼を広げ、手に集中し、黒い炎の爪になる。

僕は竜の巨体を上空から力任せに押さえつける。

「ホワイトドラゴンさん! 今です、口の中を!!」


「了解だ! 凍りつけ……ッ!!」

ホワイトドラゴンの精密な狙撃が竜の開かれた顎に突き刺さり、噴出する闇の光線を内側から凍結封印した。


「息がピッタリじゃない。喧嘩してるなんて嘘みたいだよ?」

イェレミエルが杖を掲げ、魔法陣のような物を展開する。

「ミカエルちゃん、トドメだよ!」

「了解しました、イェレミエル!」


輝強魔能シャイン・チェガンまのう輝煌槍グングニール!!」

魔法陣のような物から射出された巨大な光の槍が、氷を突き破って竜の喉元、その奥にある「巨大な眼球」へと深々と突き刺さった。

「ウガァァァァァァァァァァァッ!!」


「今だ、ミカエルちゃん! あの目玉が弱点よ!」

ミカエルは空を駆ける。

「――獣季魔能狐夜(きつねや)


静寂。

一閃の下に巨大な眼球が真っ二つに裂け、紫色の血が噴水のように吹き上がる。

骨の竜は、断末魔の叫びと共に、崩れ落ちるように沈黙した。


その瞬間、里見の意識は白い静寂の世界へと引き込まれた。

目の前には、白服を纏ったあの女性――ルポが立っていた。


「里見さん……私を止めてくれて、ありがとう。他のお友達にも、伝えてね」

「ルポちゃん……」


ルポは、憑き物が落ちたような穏やかな笑顔を浮かべていた。

「あなたの仲間は、みんな強くて……とても温かい人たちだった。……本当は、私があんなふうになりたかったのかも」


「ルポちゃん、その姿は一体……」

「私にも分からない。……でも、もう、ここまでみたい。アハハ……」


彼女の体が、光の粒となって足元から消え始めていく。

「待って、どういうこと!?」

「最後に……最初のお友達に会えて、本当によかった。里見さんが、私の初めての友達でよかった。……仲直り、ちゃんとできるといいね」


ルポの姿が完全に光に溶け、白い空間が霧散する。


現実の世界に戻った里見は、膝から崩れ落ちそうになった。僕は慌てて彼女の肩を支える。

「大丈夫ですか!? 里見さん!」


「……ごめんね、黒ドラくん。さっき、彼女が……鏡の中にいたルポちゃんがね、『ありがとう』って……」

里見はそれだけ言うと、張り詰めていた糸が切れたように意識を失った。


「里見さん!?」

ミカエルが歩み寄り、彼女の脈を確認してホッと息を吐く。

「安心しろ。酷く疲弊しているだけだ……。何があったかは知らんが、今は休ませてやるのが先決だろう。イェレミエルさん?」


「そうだね〜。後始末は騎士たちに任せて、この子は私が運ぶよ」

イェレミエルは里見を優しくおんぶすると、僕たちに微笑みかけた。

「一旦、私たちの所に行こうか。……みんなで、一緒にね」


僕らは、少しだけ距離の縮まった背中を追いながら、夕闇の迫る獣国の街を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ