間話19孤独の鏡姫Ⅲ 友達が欲しいだけ
里見が目を覚ますと、そこは色彩の一切を失った、果てのない虚無の空間だった。
上下左右の感覚さえ曖昧な暗闇。冷たい静寂が支配するその場所に、一人の白服の女性が音もなく現れる。
「……ねぇ。あなたは、私の『お友達』になってくれる……?」
その声には、震えるような孤独と、狂気にも似た期待が混じっていた。
里見は周囲を鋭く警戒し、言葉を選びながら問いかける。
「……あなたが、この街で起きている誘拐事件の犯人なの?」
「誘拐事件……? 何のことかしら。私はただ、友達が欲しくて、色んな子を私だけのこの場所に招待しただけよ」
女性――ルポは、悪びれる様子もなく首を傾げた。
その純粋すぎる瞳に、里見は背筋が凍るような危うさを感じる。
「招待……。じゃあ、連れてこられた人たちは今どこにいるの?」
「殺しちゃった」
ルポは、淡々と答えた。
「すぐに逃げようとしたり、大きな声で泣いたりするんだもの。それが、耐えられないほど鬱陶しくて……。でも、あなたはそんなことしないわよね?」
(……逃げようとしたら、即座に殺される。この空間の彼女のだろうし。下手に戦いを挑めば、私の命はない……)
里見は思考を巡らせる。今は彼女の機嫌を損ねるわけにはいかない。
情報を集め、脱出の機会を伺うために、里見は警戒をやめ、穏やかな声を装った。
「……分かったわ。お友達になりましょう」
「本当!? やったぁ……!!」
ルポの顔に、少女のような無垢な喜びが弾ける。
「ねぇ、あなたのお名前は?」
「……里見よ」
「サトミ……いい名前ね。私はルポ。よろしくね、サトミ。……ずっと、仲良くしましょうね?」
差し出されたルポの手は、驚くほど冷たかった。




