間話18孤独の鏡姫Ⅱ 友達を作れない姫
――次元No.2
タルタニア大陸
妖帝領獣国――
静まり返った夜の街。一人の幼い少女が、何かを探してふらふらと歩いていた。
「わたしの……どこ……?」
少女が大切にしていた、真っ白なウサギのぬいぐるみが、古びた鏡の前に落ちていた。
少女がそれに駆け寄ろうとしたその時。鏡の表面が水面のように揺れ、中から一人の女性が姿を現した。
「……ねぇ。こっちへおいで。私と、お友達になりましょう?」
鏡の奥から伸びてきた、影のようなドロリとした手が、少女の足首を冷たく掴んだ。
「いやっ……! 放して!!」
少女は必死に抗ったが、無慈悲な力に抗えず、鏡の中の異空間へと引きずり込まれていく。
鏡の向こう側――そこは、色彩の失われた灰色の世界だった。
灰色がかった髪に、血の通わない白い服を纏った女性が、少女の持っていたぬいぐるみに手を伸ばす。
「そのウサギ……かわいいね。私にも、触らせてくれるかな?」
女性の手がぬいぐるみの腕を掴む。恐怖に駆られた少女がそれを奪い返そうと強く引っ張った瞬間――。
――ブチッ。
鈍い音と共に、ウサギの腕が根元から引きちぎれた。
投げ出された少女は、壊れた宝物を見つめて、その場に崩れ落ち、声を上げて泣きじゃくった。
「……泣かないで。泣かれるのは、嫌いなの」
女性の瞳から感情が消える。
次の瞬間、彼女は激しい拒絶反応を示すかのように、泣き叫ぶ少女を「叩き潰した」。
静寂が戻る。
そこには、動かなくなったものと、綿の飛び出したウサギの残骸だけが転がっていた。
「……まただ。また失敗しちゃった。どうしたらいいの……バタラちゃん」
女性は自分の頭に手を置き、子供のように身を震わせる。
「私には……お友達、できないの……?」
鏡の中の「姫」は、歪んだ沈黙の中で、次の「友達」を求めて虚空を見つめ続けていた。




