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ドラゴ・ニック  作者: なんたい生物
死神12騎士編第二章黒転の章
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間話15救われた命

深い眠りから意識を浮上させると、鼻を突いたのは濃い薬草の匂いだった。

視界を動かすと、自分の全身に清潔な包帯が巻かれているのが分かる。


「……まだ動くな。あの『抹茶狼まっちゃおおかみ』どもに相当深く噛みちぎられている。動けば傷が開くぞ」


低く、地響きのような声。傍らには、数々の戦傷を刻んだ鋼のような肉体を持つ、筋骨隆々の男が座っていた。

(……何を言っているんだ? 言葉が、分からない……)


ここは、どこかの民家だろうか。

男は僕の当惑を察したのか、短く溜息を吐いてから言葉を続けた。

「……あの森に一人で倒れているとはな。俺が見つけていなければ、今頃お前はあいつらの胃袋の中だっただろうよ」


意味は通じない。けれど、この人が僕の命を繋ぎ止めてくれたことだけは、その眼差しの温度で理解できた。

僕は走る激痛を抑え込み、振り絞るような声で、故郷の言葉を紡いだ。


「……助けて、くれて……ありがとうございます……」


「聞き慣れない言語だな。遥か遠方の大陸から流れてきたのか……?」

男は僕を見つめ、何かに納得したように頷いた。

「……いいだろう。俺は国とも繋がりがある。お前さんの扱いについては追って話を通しておく。それまでは、ここで英気を養え。……話しても通じぬだろうがな」


それから数ヶ月――。

僕はサトゥルヌという名のその男から、この世界の基本的な言語を学びながら、彼の仕事を手伝う日々を過ごした。


あの洞窟で僕の命を救った赤い色に輝く石――それは「魔能石(まのうせき)」と呼ばれる物質だった。

本来、素人が扱うにはあまりに危険で制御が難しいため、多くは観賞用の高価なコレクションとして取引されているらしい。だが、あの時僕が放った炎は、間違いなく僕の意志に応えたものだった。


僕は学び、驚愕した。

この世界における力の源、「魔能(まのう)」。

それは一人一人の特性により千差万別に変化し、魂の質によって上限が決まる。大陸ごとにその解釈は異なり、未だに「正解」とされる真理には誰も辿り着いていないのだという。


そして、この世界の住人たち。

ここにはエルフやオークといった種族は存在しない。いるのは「人間」と「竜人(りゅうじん)」だけだ。

特に竜人種(りゅうじんしゅ)は多様で、神として崇められる竜人種(りゅうじんしゅ)の頂点「神竜種(しんりゅうしゅ)」。彼らによって世界を護るために生み出された「天竜種(てんりゅうしゅ)」。

人間は一種類しかいないのに、竜人は驚くほど多くの種に分かれている。


「面白い世界だ……」

僕は地図を見つめ、その構造に想いを馳せた。

「善の大陸(ぜんのたいりく)」と「悪の大陸(あくのたいりく)」という二つの巨大な陸地が対峙し、その中心に「内部大陸(ないぶたいりく)」が、周囲を囲むように「外部大陸(がいぶたいりく)」が点在している。


いつしか僕は、サトゥルヌさんの手伝いの傍ら、あの魔能石(まのうせき)を自在に操るための独自の方法を模索し始めていた。


(この後、この領地のお姫様と出会って色々あったんだった…。)


傷跡が残った自分の手のひらを見つめ、僕は別の世界の空を仰いだ。

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