第22章半竜状態の謎を解明するために、いざ妖帝領へ!!
砂魔竜との死闘から一夜明けた。
朝露に濡れる砂漠の境界線で、クリウスアーナさんは「別に行く場所がある」と僕たちに告げた。
「ああ、そうだ。お前らに一つ、いい土産話を置いてってやる。妖帝領にある『炎骨山島』――そこに行けば、お前の『あの状態』の正体が分かるはずだ。じゃあな」
「あの状態……?」
首を傾げる僕に、彼は歩きながら言葉を投げた。
「自覚ねぇのかよ。あの魔竜を斬り伏せた時の姿だよ。……『半竜状態』。お前が何者なのか、その答えがそこにある」
「なぜ、貴様がそれを知っている」
ホワイトドラゴンが、鋭い視線で彼の背中を射抜く。クリウスアーナさんは顔だけをこちらに向け、不敵に口角を上げた。
「言ったろ。俺はあいつの、古い友人だってな」
そう言い残すと、彼は陽炎の向こう側へと姿を消した。
「妖帝領か……。一年前に建国されたばかりの、獣竜種が支配する新興領域だったな」
僕の呟きに、里見さんが地図を広げながら答える。
「ここから西へ進んだ先よ。炎骨山島はその妖帝領内にある火山島。……でも、あそこはただの島じゃないわ」
「ああ。魔竜が封印されている島だ」
ホワイトドラゴンが、好戦的な光を瞳に宿して続けた。
「だが、あの男の言葉が真実なら、行ってみる価値は十二分にあるな」
「私は反対よ」
里見さんが、ぴしゃりと言い放った。
「もっと安全な調査場所があるはずだわ。あのクリウスアーナという男、まだ怪しい部分が多すぎる。彼が私たちを罠に嵌めようとしている可能性だって――」
「いや、危険だからこそ真実が眠っているんだ。あいつも言ってたろ。あそこに行けってな」
「だから、その言葉を鵜呑みにするのが危険だって言ってるのよ、ホワイトドラゴン!」
昨夜からの火種が、再び二人の間に飛び火する。僕はその間に割って入るように声を上げた。
「……僕は、あの人を信じてみたいんです。僕の知らない僕を知っている、あの人の言葉を。それに、自分の体の中で起きていることが何なのか、この目で見極めたい」
里見さんは僕の決意の固さを悟ると、小さくため息を吐いた。
「……分かったわ。でも、ドダバ砂漠に来る時に交わした約束、忘れないでね。『無理だと思ったら即座に撤退する』こと。いいわね?」
「ああ。分かってるさ」
ホワイトドラゴンがどこか上の空で答え、僕たちは西の空――妖帝領を目指して歩き出した。
どこまでも続く草原を歩き続けること、二時間。
次第に背の高い木々が目立ち始め、視界は鬱蒼とした森へと変わっていった。
「この森を抜けた先に、獣竜種たちの街、『獣国』がある。まずはそこを目指すぞ」
ホワイトドラゴンが先頭に立ち、森の奥へと踏み込む。
その時、森の深淵から「カサ……」と何かが這いずるような音が聞こえた。
僕たちは即座に武器を構え、周囲を警戒する。
木々の隙間から姿を現したのは、ボロボロに汚れた茶色の布を纏った、一人の青年だった。
彼は幽霊のように足元をふらつかせ、虚ろな目で僕たちを一度だけ見つめると――。
「……ぁ……」
細い声を漏らし、糸が切れた人形のように、その場に力なく倒れ込んだ。




