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ドラゴ・ニック  作者: なんたい生物
死神12騎士編第一章黄金の遺跡
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間話11百発百中の竜はなぜ知っているのか?

夜が更け、森は深い闇と冷気に包まれていた。

焚き火の爆ぜる音だけが、静寂の中に響いている。


ホワイトドラゴンは、炎を見つめたまま動かないクリウスアーナの背中に、重い足取りで歩み寄った。


「……聞きたいことがある」


クリウスアーナは視線を動かさない。ただ、揺れる炎を映す瞳が、わずかに細められた。

「なんだ」


「なぜ君は、誰も……天竜界(てんりゅうかい)の記録にすら残っていないこの大陸の『真実』を知っている? 黒ドラの過去に深く関わる、あの凄惨な話を……」


数秒の重苦しい沈黙。

クリウスアーナは、乾いた声でぼそりと答えた。

「……教えるつもりはない。地獄を見てきた者同士、分かり合えるなどという幻想は捨てろ」


その声は、明確な拒絶の壁だった。

ホワイトドラゴンの顔つきが険しくなり、指先が腰の銃へと掛かる。


「……力ずくで吐かせることもできるんだぞ。君に逃げ場はない」


その脅しと同時に、クリウスアーナが動いた。

瞬き一つの間にクロスボウが構えられ、その矢先は正確にホワイトドラゴンの眉間を捉えていた。


「やれるものならやってみろ。だがな……先刻の戦いからお前の射線を見ていたが、あまりに遅すぎる。そんな鈍い腕前で、『百発百中』の称号を背負っているつもりか?」


挑発的な言葉。ホワイトドラゴンの喉が、屈辱に震える。

「……僕を、侮辱するか」


「侮辱ではない。客観的な事実だ。お前はまだ、技術も、そして覚悟も未熟だと言っている」


クリウスアーナの声は、凪いだ海のように冷淡だった。

「その程度の半端な強さで、背負えるほど『仲間』という言葉は軽くはない。重荷に耐えきれず、いつかお前自身が崩壊する……。だから、俺は『仲間ごっこ』と言ったんだ」


その瞬間、ホワイトドラゴンの脳裏に、かつての先輩の言葉が、呪いのように蘇った。


「本当に守りたいものがあるなら、自分という個を捨て、怪物になる覚悟を持て」


ホワイトドラゴンは、銃を握る力を緩め、ゆっくりと腕を降ろした。

悔しさに唇を噛み、銃を持っていない方の拳を、爪が食い込むほど強く握りしめる。


「……未熟、か。勝手に言っていろ。だが、君が隠している『過去』は、必ず僕が暴いてみせる。黒ドラを守るために必要なことなら、なんだってする」


それだけを言い残し、ホワイトドラゴンはクリウスアーナを睨みつけながら、闇の向こうへと去っていった。


一人残された焚き火のそばで、クリウスアーナは小さく、自嘲気味に笑う。

「未熟者ほど、その光の眩しさに焦がれるものか……」


彼が独りごちた言葉は、どこか遠い日の自分を慈しむような、深い寂しさを湛えていた。

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