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ドラゴ・ニック  作者: なんたい生物
死神12騎士編第一章黄金の遺跡
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第18章:百発百中のクロスボウ、灼熱砂漠の探索

僕たちは、湿り気を帯びた深い森の中を歩いていた。

行く手に待つのは、生命を拒絶する灼熱の地――ドダバ砂漠。


「……空気が変わってきた。この先が砂漠か」


ホワイトドラゴンが呟いたその時だった。

ガサリ、と不自然に茂みが揺れ、狂暴な眼光を放つ小竜が飛び出してきた。


「未開の地ゆえの生き残りか……! 迎撃するぞ!」


ホワイトドラゴンが即座に銃を抜き、一体の眉間を正確に撃ち抜く。僕は刀を払い、肉薄したもう一体を一閃した。里見さんはと言えば、襲いかかる小竜の顎を素手で掴み、そのまま巨木へと叩きつける。


だが、敵は終わらない。茂みの奥から、さらに十数体の小竜が群れをなして現れ、僕たちを包囲した。


「数が多い……! 里見さん、約束通り一旦退却を――」


僕が叫ぼうとした、その瞬間だった。


「魔能――月螺の迷戦げつらのめいせん!」


涼やかな声が響き、空から銀色の光を帯びた大量の矢が雨のように降り注いだ。意思を持っているかのように軌道を変える矢が、次々と小竜の急所を貫いていく。生き残った個体は、その圧倒的な力に恐れをなして森の奥へと逃げ去った。


「……無事でよかったな。お前たち」


木陰から現れたのは、ロビンフッドのような帽子を被った一人の青年だった。落ち着いた振る舞いだが、その視線は剃刀のように鋭い。


「助けてくれて、ありがとうございます!」

僕は安堵して歩み寄った。だが、青年は無言でクロスボウを僕の眉間に向けた。


「……馴れ合うな。仲間ごっこなら余所でやれ。この砂漠では、そんな甘さは死に直結する」


「仲間ごっこじゃありません!」

僕はその冷たい銃口を見据え、一歩も引かずに語りかけた。

「里見さんもホワイトドラゴンも、僕にとっては命を預けられる大切な仲間です。遊びじゃない。……あなたにとって、仲間はそんなに軽いものなんですか?」


僕の言葉に、青年の瞳がわずかに揺れた。

「仲間など、作っても意味はない。信じた分だけ裏切られ、最後には崩壊する。それがこの世界の、唯一の真実だ」


彼がクロスボウの引き金に指をかけようとした瞬間――。


「……動くな。やるならやってみろ」


ホワイトドラゴンの弾丸が、青年の持つクロスボウの弦を正確に弾き飛ばした。同時に里見さんが背後から影のように肉薄し、強烈なタックルで彼を地面に叩き伏せる。


「クソッ……貴様ら……っ!」


「目的はなんなの? 」

里見さんが冷徹に問いかける。青年が再び武器に手を伸ばそうとしたため、僕は迷わず、刀を彼の指のわずか数ミリ横の地面へ突き立てた。 ホワイトドラゴンがその手を踏みつけ、逃げ場を奪い、銃を向ける。

「話せ…。さもないと撃つぞ」

青年は考え、言う。

「分かった…。分かった…。話すよ」


僕とホワイトドラゴンが顔を見合わせると、里見さんが小さく頷いた。

「そう……。黒ドラくん、刀を引いて。ホワイトドラゴンも」


解放された青年は、地面を這いながら大きく息を吐いた。

「100年ぶりに死ぬかと思ったぞ……」


「……さっき『昔の友達』と言いましたね。僕のことを知っているんですか?」


「お前ら、情緒の上げ下げが激しすぎるだろ……。いいよ、ドダバに向かってるんだろ? 歩きながら話してやる」


「はい、よろしくお願いします!」

僕がニコニコして答えると、彼は心底呆れたように天を仰いだ。


「……名前は?」

「クリウスアーナだ。忘れたとは言わせないぞ」


その名は、僕の記憶の底に沈んでいた「温かな夢」の残像と、ぴたりと重なった。


森を抜け、ついにドダバ砂漠の入り口に辿り着いた。

容赦ない日差しが肌を焼き、熱風が体温を奪っていく。視界が陽炎で揺れる中、クリウスアーナは静かに語り始めた。


「……お前、自分の過去……どこまで思い出せてる?」


「……『TTT』のみんなと酒場にいた夢、それだけです」


「やっぱりか。じゃあ、現実を教えてやるよ。……かつてお前が所属していた義勇団、『TTT』の末路をな」


彼の話によれば、TTTは困窮した人々を救うための組織だったが、それゆえにその時代の権力者からは激しく忌み嫌われていたという。そしてある日、悪意に満ちた罠にかかった。


「……仲間はバラバラになった。二人は処刑、二人は永久追放。そして、僕とお前、そして“ブラックドラゴン”の三人は、最下層の地下牢送りだ」


「……罪に階級があったんですか?」


「ああ。当時は五段階の刑罰があった。俺たちが食らったのは、二番目に重い『無明の牢獄』。光も音も、希望すらない暗闇の中で死を待つだけの場所だ。……今のような領主ごとの裁定制度になる前の、もっと残酷な時代の話だ」


クリウスアーナの声は、砂を噛むように苦い。


「処刑された奴らは、魔能技で見せしめのように切り刻まれ、森に晒された。追放された奴らは、大陸の境界線を越えた瞬間に呪いで命を落とす。……そして、地下牢で俺たちの希望だったのが、ブラックドラゴンだった。あいつは、誰よりも優しかったんだ。だが……」


クリウスアーナが足を止め、乾いた喉で呟く。


「ある日、あいつは豹変した。地下牢の騎士たちを獣のように食いちぎり、無慈悲に屠っていった。そこに、かつての面影は欠片もなかった。……まるで、純粋な『闇』そのものに取り憑かれたようだったよ」


「……それで、脱走を?」


「ああ。俺たちはお前の暴走――いや、あいつの暴走を止めるために牢を抜けた。それが、後に大陸全土を巻き込む最悪の戦争へと繋がった。通称――“黒竜戦”」


あまりに壮大な、そして血塗られた過去。里見さんもホワイトドラゴンも、言葉を失い立ち尽くしている。


「……どうして、僕はその記憶を失っていたんでしょう」


「分からん。あの戦争の記録は、何者かによって意図的に消去されている。残っているのは解読不能な『古竜語』の断片だけだ」


「ブラックドラゴン……その人は、今もどこかに?」

里見さんの問いに、クリウスアーナは遠く砂丘の彼方を見つめた。


「……分からねぇ。あいつはあの日、光と闇の渦に消えた。……お前を残してな」


彼の言葉は、熱風にかき消され、砂の下へと沈んでいく。

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