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ドラゴ・ニック  作者: なんたい生物
序章三部作第三章雷魔襲来
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第15章爪痕が残る戦場

雷魔竜(らいまりゅう)との死闘から数日が過ぎた。

激戦の舞台となった要塞周辺には、今も巨大なクレーターや焼き切れた大地が、あの日の脅威を生々しく物語る痕跡として残っている。


雷獄苑(らいごくえん)の市街地。眼帯をつけた銀髪の女性が、ゆっくりと街を歩いていた。

「ラファエル……!!」

聞き馴染みのある声に振り返ると、赤髪の女性――ザグリエルが元気に手を振りながら駆け寄ってきた。


「ザグリエル……。突然姿を消したから心配したんだぞ」

「えへへ、すまない。少し遠くまで吹き飛ばされちまってな。魔能が底をついて、足が動くようになるまで時間がかかったんだ」

ラファエルはジロリと彼女を見つめる。

「……まさか、またあの未完成の『竜化』を使ったんじゃないだろうな?」

「ギクッ……」


図星だった。ザグリエルが冷や汗を流すのを、ラファエルは溜息混じりに制した。

「お前の竜化はまだ不安定だ。一つ間違えば命を落とす。……そんなのは格好良くない。ヒーローなら、生きて皆を笑顔にしてみせろ」

「……うん。わかってる。でも、ラファエルだってその目……無茶したんだろ?」

「それは……」

二人が苦笑いしていると、背後からラミエルが歩み寄ってきた。

「相変わらず仲が良いな、お前たちは」


「ラミエル! 首の調子はどうだ? まだ安静にしていた方が……」

「案ずるな。これくらいの傷、雷帝の名に傷がつく。挫けてなどいられんよ」

強気な言葉とは裏腹に、彼女の首にはまだ深い包帯が巻かれていた。


【雷帝領・医療棟】


白く無機質な病室。ベッドの上では、激戦で心身共に疲弊した僕(黒竜)が深い眠りについていた。

その傍らで、全身を包帯で固めた里見が、ホワイトドラゴンを鋭く睨みつけていた。


「……ねぇ。なんで止めなかったの」

里見の声には、怒りと悲しみが混じっていた。

「あいつが行きたいと言ったから行かせた。それのどこが悪い」

無傷のホワイトドラゴンは、淡々と、どこか突き放すように答える。


「その結果がこれよ! あんたは、横で見ていただけじゃない……!」

里見が彼の腕を強く掴む。その指先には、姉との再会で負った心の傷と、守りきれなかった悔しさが滲んでいた。

「……何か言いなさいよ!」


沈黙が流れる中、松葉杖をついた雷風と、同じく傷だらけの雷蓮が部屋に入ってきた。

「おい、病室で揉めるんじゃない」

雷蓮の制止に、里見は力なく手を離した。ホワイトドラゴンは何も言わぬまま、背を向けて去っていく。里見もまた、拳を強く握りしめたまま、逆の方向へと歩き出した。

仲間たちの間にも、埋めがたい深い溝が刻まれていた。


【次元の狭間】


静寂の空間。

そこには、蝶の羽を持つ少女――超次元竜(ちょうじげんりゅう)と、読書に耽る青年、そして厳かな雰囲気を纏う始まりの竜がいた。


「まさか、あの子が『半竜状態(はんりゅうじょうたい)』に至るとはね……」

超次元竜(ちょうじげんりゅう)が呟くと、始まりの竜が重々しく応じる。

「精神体のみの覚醒とはいえ、あの『兄』が生存していたとは。暗黒大帝竜(あんこくたいていりゅう)の計画は、未だ潰えてはいなかったということか」


青年が本をめくる手を止め、冷ややかに言った。

「それよりも、ブラックドラゴン(黒竜)自身の変異が危険だ。」

「わかっている。かつて闇の世界へと変えた大帝の力……それを阻止するために、あるじは二度も力を使われたのだから」


そこへ、ロビンフッドのような帽子を被った男が、荒々しく踏み込んできた。

「おい! 二度とアイツを危険な目に遭わせないって約束はどうなったんだ!」

怒りに満ちたその声に、青年は小声で「……面倒なのが来たな」と毒づく。


「予想外だったのよ。私たちだって……」

超次元竜(ちょうじげんりゅう)の弁明を、男は一蹴した。

「『予想外』で済むか! あの時も、黒竜戦(こくりゅうせん)の時もそうだった。またアイツを戦火に放り込む気か?」


始まりの竜が静かに諭す。

「……黒竜の力は元々、暗黒大帝竜(あんこくたいていりゅう)のもの。その謎を解けるのはアイツ自身だけだ。かつての仲間として、お前が確かめてきたらどうだ?」


男は一瞬、青年を鋭く睨みつけた後、背を向けて立ち去った。

「……ふん。もしアイツが再び『あの姿』に戻るようなら、俺がこの手で殺してやる」


その背中を見送りながら、超次元竜(ちょうじげんりゅう)がポツリと漏らした。

「大丈夫かな……アイツ、本気だよ?」

「安心しろ」と始まりの竜は言った。「あいつは二度と黒竜戦のような悲劇を起こしたくないだけだ。心に深い傷を負い、本当は誰も殺したくないと願っている。……口は悪いが、あいつこそが最後まで黒竜を守り抜く、一番頼れる存在になるだろうさ」

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