第14章黒き半竜の脅威
【雷獄苑】
「どうした、防ぐだけじゃ飽きちまうぜ!」
銀髪の男の猛攻を凌ぎながら、ファードが不敵に笑う。
「焼鳥流・刺落羽螺!」
背中から噴出した炎の翼が剣に絡みつき、巨大な炎の渦となって銀翼を飲み込む。
「これだ、このスピードを待っていた! 魔能・銀翼!」
銀髪の男が空へと逃れるが、ファードの追撃がそれを許さない。
「焼鳥流・真魏燃!」
炎の鳥と化したファードが音速を超えて突撃する。その刃が届く寸前、影から飛び出したフードの青年・モルスがナイフで一撃を受け止めた。
「手助け参上……。銀翼、撤退だ。あいつらが逃げた」
モルスは空の彼方、ピンクの竜の咆哮が響く方角を指差す。
「死神帝国に仇なす者は、いずれまた。……さらばだ」
影の中へと消えていく二人を見送り、ファードは剣を収めると、戦い疲れて倒れたザグリエルを見て抱え上げ、宿へと急いだ。
一方、ザグリエルと戦っていたピンク色の竜――眠そうな青年は、彼女の「変幻自在な竜化」に驚愕していた。
二足歩行の攻撃特化、四足歩行のスピード特化。
「竜化の常識をひっくり返す力だ……。半竜状態になったら、どれほどの化け物になるか楽しみだよ」
ピンクの竜は不気味な笑い声を残し、爆煙と共に姿を消した。
ザグリエルは竜化は解かれ、地面に倒れる。
【北門:光を越える閃光】
ラファエルは、ラグナロクの闇殺剣と死転の銃弾という絶望的な挟み撃ちの中にいた。
「一か八か……。天眼……開眼!!」
彼女が左眼を見開いた瞬間、その瞳は黄金色に輝き、世界は止まった。
「魔能・千切り閃光!」
光速すら凌駕する神速の連撃。ラグナロクの魔剣を弾き、死転の弾丸を置き去りにする。
「なっ……これが、7英天竜……!」
「撤退だ! 死転!」
影の中へと逃げ帰る帝国軍。だが、技を出し切ったラファエルの体からも血が吹き出す。
「無茶をしすぎたか……。だが、まだ……!」
ラファエルは倒れそうな体に鞭打ち、雨のように降り注ぐルシフェルの黒光線からラミエルを救い出し、戦線を離脱した。
【枯れ木の森】
雷蓮と雷風の兄妹は、合体魔能「轟く雷龍化」で異形の怪物を貫き、辛くも勝利を収めていた。
しかし、里見の戦場は悲劇に包まれていた。
「……お姉ちゃんなの? 答えてよ!」
必死の問いかけに、ツインテールの女性――里季は冷たく言い放つ。
「私はお姉ちゃんじゃない。……あの『紫髪の女』を覚えているのでしょう?」
その声は、かつての優しさを失い、どす黒い殺意に満ちていた。
「魔能・レッド・パーティー!」
血のように赤く染まった棘付き鉄球が里見を地面へと叩き伏せる。里見は意識を失う直前、影の中へと消えていく姉の背中を、ただ涙で見送るしかなかった。
【要塞】
「弟の魔能を勝手に使いやがって……!」
僕の体を借りた「兄」が、ブラックドラゴンの猛攻を受け流しながら咆哮する。
ブラックドラゴンが放つ「魔能黒燿の一撃」と、兄が放つ「黒炎斬」が激突し、大気を震わせる。
「精神だけが残っているから、弱くなっているのかい?」
ブラックドラゴンの嘲笑に対し、兄はさらに魔能を昂らせた。
「黙れ。……弟には負荷がかかるが、一気に決める!」
その時、影の中から何者かの気配を感じたブラックドラゴンは、不敵に笑って姿を消した。
「また会おう、お兄ちゃん。今度は君の全てをいただくよ」
残された兄(僕の体)の前に、ついに「雷魔竜」が姿を現した。
「復活したてで弱っているようだが……死ね。半竜魔能・暴竜激!」
黒紫の鱗に覆われた爪と、黒炎を纏った刀が、雷の結界を強引に切り裂く。
要塞の罠が発動し、無数の針が雷魔竜を貫いた。嗅覚を奪われ、狂乱する巨竜。
兄は一気に間詰めをし、その巨大な首めがけて黒炎の刃を振り下ろした。
「終わりだ。魔能・黒炎斬!」
激しい叫末と共に、雷魔竜の首が地面に落ちる。
「ふん……昔より弱くなったな……」
兄の呟きと共に、僕の体の角と鱗が消えていく。魔能の限界。
僕は勝利の静寂の中で、そのまま意識を手放し、倒れ込んだ。




