第13章恨むべき敵
【北門】
ラミエルは大剣を嵐のように振り回し、無限に湧き出るコブラを「魔能雷翠葬風の舞」で切り刻んでいた。しかし、崩壊する小屋の残骸から、更なる絶望が舞い降りる。
漆黒の六枚翼を広げ、異形の魔剣を携えた白いフードの男。彼はフードを脱ぎ捨て、不敵に名乗った。
「ダークエンジェルドラゴン、ルシフェル……。あるいは、ある大陸では『サタン』と呼ばれています。各地の魔剣騒動を仕掛けたのは、この僕さ…。」
ルシフェルが放った「ダーネスボール」は、ラミエルの魔能を強引に吸い取り、彼女を瓦礫の中へと吹き飛ばした。
「ラミエル!!」
助けに向かおうとするラファエルの前に、死神帝国の「死転」と、冷徹な瞳の「兄貴」――ドラグノアが立ちはだかる。
「おっと、お姉さん。仲間が優先かい?」
死転の銃弾とドラグノアの闇殺剣が、光速で動くラファエルを追い詰める。
「速い……私と同じ速度か!?」
「光すら置き去りにするのが我の闇。……7英天竜、ここで果てなさい」
【枯れ木の森】
一方、里見と雷風の前には、新たな脅威が立ちはだかっていた。
雷風は槍で拳を受け止める。
「ヴァンパイアクイーン様に連れてこられちゃってさ。お前ら、雑魚?」
傲慢に言い放つ牛王竜チタロスが、影から「実験体」を解き放つ。それは人間と魔物を融合させた、口から無数の手が生えた異形の怪物だった。
トラ丸たちと共にチタロスは影の中へと消える。
「死神帝国……貴様ら、こんな非人道的なことを!」
雷蓮が加勢に現れるが、怪物の放つ青黒いレーザーが雷風の肩を焼き、戦況は悪化していく。
同じ頃、里見は大量の分身を操るチェラスを「魔能・ボーネラ」で一掃していた。しかし、森の奥から現れた黄色いポニーテールの女性を見た瞬間、里見の動きが止まる。
「お姉ちゃん……? 里季お姉ちゃんなの!?」
返答はない。女性は冷酷な無言のまま、棘付きの鉄球を里見に叩きつける。
「なんで……なんでこんなことをするの!」
血だらけの腕で鉄球を受け止める里見。その悲鳴は、冷たい鉄の音にかき消された。
【要塞近郊】
要塞の罠を点検していた騎士たち。
僕は、森の奥から刺さるような視線を感じ、
ホワイトドラゴンさん。あっちから、何か視線を感じるんですが……行ってきてもいいですか?」
「えっ……う、うん。いいんじゃないか。何かあったらすぐ戻れ。俺が助けに行く」
「分かりました。ありがとうございます、ホワイトドラゴン……」
ホワイトドラゴンは、わずかに顔を赤らめた。
僕はホワイトドラゴンさんにそう言って、一人で調査に向かった。
そこで待っていたのは、ボロボロの黒マントを羽織った黒髪の青年だった。
「久しぶりだね、弟……」
青年は2枚の黒紫のボロボロの翼を広げ、圧倒的な圧力を放つ。
「弟? まさか、僕の頭に話しかけていたのは……」
「違うよ。君の中にいる『もう一人』……僕らの兄貴さ」
その瞬間、僕の脳内に声が響き渡った。
『――変われ、弟』
僕の意識は深い闇に沈み、代わりに「彼」が目覚めた。
僕の体から角が生え、腕が黒紫の鱗に覆われていく。
「久しぶりだな、ブラックドラゴン。……いや、弟の皮を被った捕食者…。黒竜戦ぶりか?」
僕の口から出たのは、僕自身の声ではなかった。内に眠っていた何者かの目覚めだった。
「そうだな。君とも会うのはあれぶりだな。残念だが、計画のために君たちの魔能をいただく。そうすれば、この次元も……次元の向こうにいるあのお姫様も、全て俺のものだ」
嘲笑うブラックドラゴンに対し、僕の体を借りた兄は刀を構え、低く唸った。
「弟の体に負荷はかかるが、やむを得ん。……今度こそ、取り返してもらうぞ」




