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ドラゴ・ニック  作者: なんたい生物
序章三部作第三章雷魔襲来
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間話8雨泣き剣(あめなきつるぎ)

――次元No.2

悪の大陸 黒戦歴329年

シュートロ・ミング地方 シンニ王国――


降りしきる雨と、立ち昇る火光。

瓦礫の山と化した王都では、クーデターを起こした叛乱軍と、国の要請で駆けつけた「天竜界軍」の精鋭たちが激しい火花を散らしていた。


その最前線に、三人の少女の姿があった。


「はぁ、はぁ……! 一体どんだけ湧いてくるのよ!」

ラミエルが大剣を振るい、迫り来る兵士を薙ぎ払う。


「しょうがねぇだろ、ここは『悪の大陸』だ。争いなんて日常茶飯事……。けど、今回は相手が悪すぎる。まさかこんな大規模なクーデターに巻き込まれるなんてね」

ラファエルが鋭い剣閃で敵の武器を弾き飛ばす。


「二人とも、手を緩めないでください! 隙を見せれば終わります!」

緑髪の短髪を揺らし、盾で攻撃を防ぎながら正確に急所を突く少女――ラズグジエルが叫んだ。


「でも、私たちまだ学生だよ? 初任務でこれは……ハードすぎじゃない?」

「そんな弱気じゃ、いつまで経っても弱いままですっ!」

「強さが全てじゃねーだろ、ラズグジエル!」


三人はボロボロになりながらも、背中を合わせて戦い続けた。しかし、戦場の奥から地響きと共に「絶望」が現れる。

両腕が肥大化し、禍々しい怪物の爪へと変貌した男。叛乱軍の首謀者だ。


「……本丸のお出ましだな。やるぞ」

ラファエルが構えるが、ラズグジエルがそれを制した。

「待って、相手が悪い! ここは一旦引いて、先生やイェレミエル団長を呼んでくるべきです!」


「――その暇は、ないようだな!」

怪物の腕が、空を覆うほどの巨大な拳となって振り下ろされる。

「くっ……!!」

ラファエルが咄嗟に大剣で受け止めるが、あまりの重圧に膝が折れそうになる。


「腕が、増えた……!?」

男の肩から不気味な三本目、四本目の腕が生え、ラファエルを握り潰そうと迫る。


「危ない……!!」

その時、ラズグジエルがラファエルの前に躍り出た。

「魔能・聖なる盾!!」

光の障壁が展開されるが、怪物の猛攻に悲鳴を上げ、ピキピキと亀裂が走る。


「逃げて……二人とも!!」

「何言ってんの! 逃げるなら、ラズグジエルも…!!」

「逃げてぇ!!」

ラズグジエルは、割れゆく光の壁の向こうで、二人を振り返り微笑んだ。

「……楽しかったよ。ラファエル、ラミエル。二人はきっと、私よりずっと強くなれる。……私は、君たちのようにはなれないから。だって、私……本当は、すごく弱いもん……」


「ラズグジエル!!」

ラミエルが、強引にラファエルの腕を掴んでその場を離脱する。ラミエルの頬を、雨ではない熱い涙が伝っていた。

背後で、盾が粉々に砕け散る音が響いた。


戦いは、遅れて到着したガブリエルさんとイェレミエルさんたちの加勢により、天竜界軍の勝利に終わった。

しかし、野営地のテントの中、勝利の歓喜はどこにもなかった。


「……悲しむな」

濃い緑髪の男性――ガブリエルさんが、うなだれる二人の前に立った。

「戦争はいつ誰が死ぬか分からない。あいつは、お前たちを生かすために勇気を持って死んだんだ。……だが、仲間を失うたびに折れているようでは、この先何度も同じ光景を見ることになるぞ」


「先生……でも……」

「『でも』じゃない。……いいか、お前たちだけに教えてやる。今、全大陸のバランスが崩れ始めている。黒竜戦(こくりゅうせん)の影響で大陸間の緊張が高まり、このままでは世界を巻き込む大戦が起きるだろう。……それを阻止するために、ゼロス様はある計画を立てている」


ラミエルが涙を拭い、顔を上げた。

「計画……?」

「全大陸の安全を守り、天竜界の頂点に立つ八人の守護者――『7英天竜(しちえいてんりゅう)』の設立だ」


「そんなもので、この混沌が終わるんですか……?」

「わからん。だが、この血塗られた『黒戦歴(こくせんれき)』を終わらせる光にはなるはずだ」


そこへ、ピンク髪の女性がふわりと現れた。

「フフ、大丈夫大丈夫! きっと明るい未来があるからさ。悲しんでばかりじゃ、ラズちゃんも浮かばれないよ?」

彼女はラファエルの肩を抱き、悪戯っぽく微笑んだ。

「7英天竜(しちえいてんりゅう)は私が考案したの。私はね、ラファエル……君をその一人に推薦する予定なんだよ」


「私が……7英天竜(しちえいてんりゅう)に?」

「そう♪ 皆を笑顔にできる剣士にね。君ならなれるさ。――そうだ、二人を笑顔にさせるとっておきのマジックを見せてあげる」


彼女は両手をぎゅっと握りしめ、パッと開いた。

そこには、なぜか冷えた瓶入りの牛乳が握られていた。

「ギュッと握った手から、牛乳が出てきた~♪」


「……そのノリは今やるな、イェレミエル。二人は……」

ガブリエルが呆れ顔で窘めようとしたが、ふと見ると、二人は少しだけ吹き出していた。


「ほらね。笑顔が一番。笑顔がないと平和はやってこない。私はどんな時でも明るく振る舞うよ、皆を笑顔にするために。……だからラファエル、君もいつか、誰かを照らす笑顔の英雄になってね」


彼女はウィンクを一つ残すと、軽やかな足取りで去っていった。

雨はいつの間にか止んでいた。ラファエルは、ラズグジエルが命を懸けて守ってくれたこの手を強く握りしめ、遠い空を見つめた。

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