第12章脅威と帝国
雷帝竜ラミエルとラファエルは、夜明けと共に別行動を開始。僕とホワイトドラゴンさんは、雷蓮さん率いる雷帝軍本隊と共に、要塞へと向かう。
里見さんは、雷蓮の妹である。雷風さんの部隊に加わり、雷魔竜を誘導する「引き寄せ班」として枯れ木の森へと出発した。
そしてザグリエルは、帝国の奇襲に備えて首都「雷獄苑」の守備に残った。
【北門】
ラファエルと雷帝竜ラミエルは、北門近くの古びた小屋の前にいた。ラミエルの手には、身の丈ほどもある巨大な大剣が握られている。
「……本当なんだな?」
ラファエルの問いに、ラミエルは冷徹な瞳で頷いた。
「ああ。本物のプラナスは数年前、雷魔竜の襲撃で命を落とした。私の目の前でな。今いる『プラナス』は、死神帝国が送り込んだ偽物だ」
二人が小屋へ踏み込もうとしたその時、背後から「プラナス」が声をかけてきた。
「雷帝竜様、こんな場所で何を……?」
ラミエルは返事の代わりに、偽プラナスの胸ぐらを掴み上げた。
「おい。この小屋の中に何を隠している?」
「……何のことでしょうか」
「白々しい!」
ラミエルは渾身の力で偽プラナスを蹴り飛ばした。吹き飛んだ偽者が小屋の扉を粉砕すると、中から豪奢な「鏡」が現れ、その表面から不気味な女性――パトラが這い出してきた。
「ほら、言ったじゃない。バレるって。あなたの変装、穴だらけよ」
「うっさい! 計画が狂ったんだよ! ゴースネ、やれぇ!!」
小屋の木箱を突き破り、金色の巨大コブラ・ゴースネがラミエルに襲いかかる。
「やはり黒か! ラファエル、やるぞ!」
「ああ、久しぶりに君と背中を合わせられて嬉しいよ」
ラファエルが剣を抜き、鏡から放たれる無数のガラス破片を高速で叩き落とす。ラミエルは大剣でゴースネの噛みつきを受け流すと、そのままコブラを盾にしてガラスの雨を防ぎ、一気に一刀両断した。
「さあ、降参しな」
ラミエルが踏み込むが、パトラは口笛を吹いて嗤った。
「あら、一匹だけだと思った?」
地面から、、無数の金色のコブラが湧き出すように現れた。
「ちぃ、こんなに潜んでいやがったか!」
【雷獄苑】
首都では、死神帝国の「銀髪の男」と「眠そうな少年」が建物を次々と破壊していた。
「眠い……もう帰って寝たいよ」
「帰るな。逃げたらぶった斬るぞ」
銀髪の男が両剣から放った斬撃が民家を直撃し、瓦礫が親子に降り注ぐ。
「危ない!!」
間一髪、親子を救ったのは、見知らぬ赤髪の女性だった。
「焼鳥流・希守!」
彼女が剣を振ると、炎の渦がバリアとなり瓦礫を弾き飛ばした。
「今のうちに逃げな!」
銀髪の男が興味深げに目を細める。
「人間か……面白い。名は何だ?」
「ソドラ大陸出身、焼鳥流継承者・ファード! 子供を泣かせる悪党は見逃せないな」
そこに来たザグリエルはその言葉に驚愕する
「ソドラ大陸……? 二年前に滅びたはずの大陸の出身だって? あの子、人間なのにあの魔能……何者だ?」
銀髪の男が銀の翼を広げ、超高速で襲いかかる。
「ファードか! この戦い、俺を楽しませてくれよ!」
「戦いは遊びじゃない、真剣勝負だ! 焼鳥流・攻勢人!」
激突する炎と銀光。その傍らで、眠そうな少年がザグリエルに近づく。
「あっち側は殺気がすごいねぇ……。僕は君をさっさと倒して寝るよ」
少年は抱えていた「枕」で、ザグリエルの猛烈な炎の拳を受け止めた。
【枯れ木の森】
一方、里見さんと雷風たちの前には、ついに雷魔竜が姿を現した。騎士たちが命がけで魔竜を要塞へ引き寄せる中、森の影から死神帝国の奇襲が始まる。
「楽しい……実験の時間……」
真っ黒な鎧に身を包んだ・チェラスが、自分の腕を切り落とすと、それが新たな分身となって増殖していく。
「里見殿、協力してくれ! ここは私が食い止める!」
雷風が槍を構え、虎の獣人・トラ丸に突撃する。
「トラ丸、そのまま殴りなさい!」
肩に乗った少女の指示で、トラ丸の剛腕が雷風を襲う。
「やらせない……!!」
里見さんの鋭い蹴りがトラ丸を吹き飛ばすが、増殖したチェラスがバラバラの動きで里見さんに襲いかかる。
「興味深い……! 解剖だ! その体の構造を見せてくれ!」
「お断りだね。君みたいな狂人は大嫌いなんだ! 魔能・チューバラ!」
里見さんが回転蹴りで分身を一掃する一方、雷風はトラ丸の怪力に押されていた。
「魔能・雷電纏・開!」
広範囲の電撃でトラ丸を突き放すが、少女の操るムチが雷風の槍に絡みつく。
「しまっ……!?」
「狙いはそっちよ。トラ丸、今よ!」
無防備になった雷風の背後に、トラ丸の巨大な拳が迫る。




