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ドラゴ・ニック  作者: なんたい生物
序章三部作第三章雷魔襲来
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第11章迫る脅威

――雷帝領(らいていりょう)

雷獄苑らいごくえん

雷帝竜の(らいていりゅうのやかた)――


僕らはプラナスさんの案内に従い、馬車を降りて重厚な石造りの館へと足を踏み入れた。廊下に響く足音が、これから始まる事態の重さを物語っているようだった。

一つの大きな扉の前で、プラナスさんが足を止め、静かにノックをする。


北門警備団長(きたもんけいびだんちょう)プラナスです。7英天竜(しちえいてんりゅう)のお二人とそのお仲間を連れて参りました。入室の許可を」

「……入れ」


低く、通る声が響く。

扉が開かれると、広々とした執務室の真ん中に、一人の女性が座っていた。

金髪の美しいたてがみのような髪。その前髪の先は二本だけ、夜のように深い黒色へと伸びている。そして何より目を引いたのは、彼女の首に痛々しく巻かれた白い包帯だった。


「よくぞ来てくれた、7英天竜(しちえいてんりゅう)。……ラファエル、息災だったか」

「ラミエルも。元気そうで何よりだ。首の調子はどうだい?」


ラミエルと呼ばれた雷帝竜(らいていりゅう)は、少しだけ顔を歪めて首をさすった。

「だいぶ良い。だが、包帯を外せないのは退屈だし、動かすとまだ少し響くよ」

「そうか……」

二人は信頼を確かめ合うように、軽く拳を合わせた。その様子を見ていたザグリエルが、不思議そうに首を傾げる。


「お話し中すまないが、ラファエルと雷帝竜は知り合いなのか?」

「ああ。学園時代からの友人だ」

ラファエルの言葉を引き継ぐように、ラミエルも遠い目をしながら頷いた。

「そうだ……昔は『三人』で、バカみたいに楽しくやっていたよ」


「……もう一人は今、何をしているんだ?」

ザグリエルの無邪気な問いに、場が凍りついた。ラファエルとラミエルは同時に視線を落とし、絞り出すような声で言った。


「死んだよ」

「あの戦いは……一生忘れられない、地獄のような出来事だった」


暗い影が二人の顔を覆う。ザグリエルは慌てて手を振った。

「あ、ああ……悪い。変なことを聞いてしまったな。忘れてくれ、二人の古傷を抉るつもりはなかったんだ」

「気にしてくれてありがとう、ザグリエル。……さて、本題に入ろうか」


ラミエルが表情を切り替えると、プラナスが横に立ち、戦況を報告し始めた。

雷魔竜(らいまりゅう)が復活した理由については、既にお伝えした通りです。現在、雷魔竜(らいまりゅう)はここ雷獄苑(らいごくえん)を目指して進行中。遅くとも一週間以内、早ければ明後日にも到着する見込みです。復活直後に先遣隊を送りましたが……結果は全滅でした」


里見さんが表情を険しくする。

「全滅……かなりまずい状況ですね」

「ああ」とラミエルが応じる。「また同じように軍を送り込んでも、被害が拡大するだけだろう?」


「わかっている。同じ過ちを繰り返すほど、私は愚かではないよ。別の作戦を用意している」

ラミエルは机の上に広大な地図を広げ、二色のコマを置いた。

「黄色いコマが雷魔竜(らいまりゅう)。白いコマが我らだ。報告によると、雷魔竜(らいまりゅう)は異常に発達した『嗅覚』で獲物を追っている」


「……ということは、目が見えていないんですか?」

僕の問いに、ラミエルは鋭い視線を向けた。

「いや、目は見えているようだが、極端に視力が低いらしい。その分、匂いには敏感だ」


ラミエルは白いコマを地図の端へと動かした。

「作戦を説明する。雷獄苑(らいごくえん)とは別の方向に、囮となる巨大な要塞を築いた。そこに私たちが『匂い』を放つ罠を仕掛け、雷魔竜(らいまりゅう)を引き寄せる。包囲網で動きを止め、一気に叩く。だが……」


ラミエルはそこに、漆黒のコマを置いた。

「『死神帝国』の連中が、間違いなく邪魔をしてくるだろう」


ザグリエルが拳を鳴らす。

「で、私たちは何をすればいい? 暴れる死神帝国たちを蹴散らせばいいのか?」

「……ザグリエル、君たちは要塞へ向かってくれ。だが、ラファエルだけは別に動いてもらう」


「……? 私一人だけ別行動か?」

ラミエルはラファエルに近づくと、その耳元で誰にも聞こえないほどの小さな声で、何かを囁いた。

「……なるほど。理由は後で聞かせてもらうが、了解した」


ラファエルの顔に、何とも言えない複雑な色が混じる。

「本当は今すぐにでも動き出したいところだが……あいにく準備が整うのは明日だ」

「明日? なぜだ、一刻を争う事態だろう」

ザグリエルの詰め寄りに、ラミエルは静かに首を振った。

「焦って準備不足のまま動くことこそ、国を滅ぼす。……今日は客室でゆっくり休んでくれ。プラナス、案内を」


「了解いたしました、雷帝竜(らいていりゅう)様。……皆様、こちらへ」

プラナスさんに導かれ、僕らは客室へと案内された。

各自の部屋に入り、扉を閉める。


ふかふかのベッド。

窓の外で鳴り響く遠雷の音が、嵐の前の静けさをより一層、強調しているようだった。

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