間話6集う12人の騎士
次元No.不明冥界――死神城
死神城の深部。そこには、巨大な円卓を囲むように、数えきれないほどの空席が並ぶ不気味な広間があった。壁には苦悶に歪む人々の顔を描いたような、名もなき画家の不吉な絵画が飾られ、冷たい空気の中には常に誰かの囁き声が混じっている。
円卓の端、行儀悪く足を机に投げ出している銀髪の青年。口元をマスクで覆ってる。
筋骨隆々とした二足歩行の虎、トラ丸だ。鋭い眼光を放つその肩には、金髪ツインテールの少女がちょこんと腰掛けている。
そこへ、古びた枕を抱え、今にも寝落ちしそうな眠たげな少年がふらふらと入ってきた。
「おや……? みんな集まるのが速いねぇ~」
銀髪の青年が、苛立ちを隠さずに鼻を鳴らす。
「とっくに全員揃っている。お前が寝すぎなだけだ」
「そうか、そうか~、僕が寝すぎてるからか~……」
少年は、生あくびを噛み殺しながら、やる気なさげに空席に身を沈めた。
「おや……お話の途中だったかな?」
空間が歪み、白いフードを目深に被った青年と、マントを羽織った髭面の男、ドラグノアが唐突に姿を現した。
「びっくり~、びっくり~!!」
「やれやれ、相変わらずてめぇらぁは神出鬼没だな」
トラ丸が皮肉げに笑う。ドラグノアは、周囲を見渡すと野心に満ちた声で告げた。
「貴様たちは『半竜状態』へと至れる稀少な存在だと聞いている。我が『王』となるための戦いにおいて、即戦力となるはずだ。今回の任務だが……」
「ハハ、そうだね。僕は半竜になれるからねぇ~」
眠そうな少年が、どこか他人事のように笑う。すると、隣にいた白いフードの青年が、静かに、だが逆らえない威圧感を持って制した。
「……話はそこまで。僕からも話したいことがある。君は黙ってて」
「ちぃ……だからお前と手を組むのは嫌いなんだよ」
金髪の少女が不機嫌そうに頬を膨らませる。
「で、突然私たちを呼び出して何の用?」
白いフードの青年は、余裕に満ちた笑みを浮かべて口を開いた。
「ハハ、まだ集まっていない子もいるけれど、いいかな。今回集まってもらったのは、僕の可愛い手下である『アイスドラゴン』からの報告があったからだ。――雷魔竜を復活させたらしいよ」
髭面のドラグノア以外の全員に、衝撃が走る。
「雷魔竜を……復活させただと……!?」
「ハァ……!? なんのためにそんな面倒なことを?」
「目的? ああ、それは秘密」
ひらひらと手を振る青年に、銀髪の男が鋭く問いかける。
「じゃあ、なぜドラグノアさんがここにいるんだ?」
「ああ、彼は強力な『協力者』さ」
ドラグノアは忌々しげに顔を歪めた。
「……ルシフェル、勘違いするな。例の物を渡すという約束があるから手伝ってやっているだけだ」
「君よりも僕の方が強いってこと、忘れないでほしいな?」
「ちぃ……。やはり、こいつと組んだのは間違いだったか」
「ああ、ごめんごめん、ドラグノア。君の力が必要なんだよ」
白いフードの男――ルシフェルが、親しげにドラグノアの腕を掴む。
「うざい……!! 離れろ!!」
ドラグノアが激しく腕を振り払う。ルシフェルはふわりと宙を舞い、すとんと優雅に着地した。
「もう……酷いな。そんな短気じゃあ、ドラグノアくんは王にはなれないよ?」
銀髪の男が、話を本題へ戻す。
「……それで。僕らは何をすればいい?」
ルシフェルの目が、フードの奥で妖しく光った。
「君たちには、黒竜たち、そして雷帝軍と戦ってほしい」
銀髪の男が、好戦的な笑みを浮かべる。
「いいぜ。……その『黒竜』とやら、食いがいがありそうだ」
「面倒だなぁ~……すぐにまた寝たいのに……」
「勝手に寝ていろ」
銀髪の男が吐き捨てる。金髪の少女は、トラ丸の毛並みを弄りながら目を輝かせた。
「面白くなりそうね……行くわよ、トラ丸」
「各自、準備をお願いするよ」
ルシフェルの言葉を合図に、騎士たちは次々と席を立ち、闇の中へと消えていった。
静まり返った広間。その影から、体半分だけを露出させた二人の男が現れた。
一人は口元をフードで隠した青年。もう一人は、整った駅員のような服装に身を包んでいる。
「……我らの出番は?」
フードの青年が低い声で問う。
「あの子たちがピンチになった時に現れればいいさ。頼んだよ、『影の暗殺者』さん」
「了解。……ルシフェル様もドラグノア様も、無理をしない程度に」
青年は再び、溶けるように影の中へと没した。
残された駅員姿の男――死転が、愉快そうにドラグノアを見やる。
「おいおい、こいつは面白くなりそうじゃねぇか、ドラグノアの兄貴!! そいつらまとめて『絶望のレール』にぶち込んでやろうぜ!」
ドラグノアの瞳に、冷酷な光が宿る。
「……我らの真の目的は、雷帝竜、そして『7英天竜』の一人を葬ることだ。死転、手はずを整えろ」
「任せろ、兄貴!! ターゲットの天竜は?」
「ラファエル。……雷帝竜とは学園時代の同窓で、かつて無敵竜が友達の一人だそうだ」
「へぇ、そいつはいい。最高の獲物だ。死のレールへと招待してやろう。……そうだ、チェラスも呼んでくるぜ。あいつなら、喜んで協力するだろうからな」
「……どうせ自分の体を切り刻んで遊んでいるだろうが、戦力にはなる。連れてこい」
死転は不気味な笑い声を残し、影の中へと消えていった。




