↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/37

ep.5 愛していた家族が豹変した

いつの間にか、体を駆け巡っていた電流のような感覚は消えていた。呼吸も通常通りに戻っている。それでも体だけは、まだ少し熱い。


私は、ぼんやりとゼアキを見上げた。

――今、何が起こってるの?

頭が、現実に追いつかない。


すると、ゼアキが私を抱き上げた。直後、視界がぐにゃりと歪み、景色が溶けていく。私は、ゼアキに瞬間移動魔法を発動されたのだと理解した。


――ここ、どこ?

視界の揺らぎがなくなると、私は無機質な空間にいた。


そこは、三畳ほどの小さな部屋だった。壁も床も天井も、艶のある灰色の石で造られている。天井だけは異様に高く、十メートルほどもあった。


だが、この部屋には家具が一切ない。窓もない。

銀色の扉には取っ手も鍵穴もなく、中央には黄色い毛布が一枚だけ、きれいに畳まれて置かれていた。


そして、部屋の中はひんやりと冷たい。天井の小さな照明から、白い淡い光に照らされている。だが温もりは存在しない。


「お兄ちゃん、……ここどこ?寒いよ。さっきの部屋に戻りたい」

私は不安になってゼアキを見上げた。


兄の表情を見て、私は頭が真っ白になった。


そこにいたのは、さっきまで優しく笑っていた兄ではなかった。感情の消えた灰色の瞳が、静かに私を見下ろしている。


「お兄ちゃん……?」

呼びかけると、ゼアキは口角を吊り上げた。そして、私を自身の腕から、何のためらいもなく落とした。


「うっ……」

受け身を取る間もなく、小さな体が毛布の上へ叩きつけられる。鈍い痛みが背中から全身へ走った。

「いたっ……」


何が起きたのか理解できず、私は呆然と床へ手をつく。


ゆっくり顔を上げると、ゼアキは表情一つ変えず、ただ私を見下ろしていた。


――私……今、何をされてるの?


ゼアキは冷ややかな声で命じた。

「今すぐ力を使え。俺の魔力を高めろ」


震える私を苛立たしげに睨むと、ゼアキはしゃがみこんだ。そして、私の両手をとり、自身の両手で包み込む。

いつもの優しい手の温もりにつつまれたにも関わらず、鳥肌がたった。


「……どういうこと?力って何?魔力を高める?」


怯える私とは対照的に、ゼアキはふっと笑った。

「まあ、使ってみろ。カヤ。お前はただ、願うだけでいいんだ。"ゼアキの魔力を高めたい"ってな」

「分からないよ」


――何が起こってるの?私、どうしたら良いの?


「いいからやれ!言うことを聞くんだ!」

狭い部屋の中に、兄の怒声が響いた。


――目の前にいるのは本当に兄なの?優しいお兄ちゃんなの?


困惑して、頭が上手く働かない。


優しい兄ではなく、命令を下す国王が、そこにいるようにしか見えなかった。


――ゼアキの魔力を高めたい!もっと強くして!

ひとまず、私は必死で願った。他にどうしていいか分からなかったから。


十秒ほど願い続けた頃だろうか。


ゼアキの灰色の瞳が、歓喜に染まっていく。それは、獣が獲物を見つけたような、ぞっとする光だった。


やがて彼は、私の手をゆっくり離した。

「完成だ……」

感極まったように呟くと、ゼアキはゆっくりと立ち上がった。

「ハハハッ」


ゼアキは笑い始めた。掠れたような笑いは次第に大きくなり、やがて部屋いっぱいに響く高笑いへと変わっていく。


「成功だ!一族は成し遂げた!」


いつもお読みいただきありがとうございます!続きも毎日20:30に更新しますので、少しでも面白いと思ったらブックマークで応援していただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。