31話 初志の道を⑨
「ほら、エン自身もだけど、その周りの人たちもラディの味方になってくれると思うよ。ラディの扱いの事、いい感じにしてくれたじゃん。
だから、もしかしたらラディの事も迎え入れてくれるんじゃないか?」
咄嗟の思い付きのまま言ったが、言いながら自分でもいけそうな案に思えた。
それに、エンの居る場所は確か上層。それなら、下層のごたごたからは遠く離す事ができる。
「でも、それじゃ鈍色仮面のみなさんは……。」
「そのみんなが『赤霧の鎧』に対抗する事を望んでいるんだろ? その危険を承知の上で。
単なる考えなしの無謀なら、それは無理してでも一度止めた方がいいと思う。けど鈍色仮面は、ラディにはそう見えたか?」
思考の間ののち、ラディが答える。
「でも、ツァイシーさんをそのままになんて……。」
「そのツァイシーが『降りた方がいい』って言ったんだろ?」
「それは、そうですけど……。」
「僕は最初の時くらいしかツァイシーとは会ってないけど、無責任な奴には見えなかった。
そのツァイシーが、役目だったとはいえ自分で誘ったラディにそう言うって事は、それ程の事なんだと思う。
だから、ツァイシーの事をって考えなら、素直に逃げるべきだと思う。」
ツァイシーの事を利用してるようで、気は良くなかった。
「…でも、エンさんに会いに行く事はできるんです? どうすればいいか……。」
確かエンはコンジュ関係の所に居て、コンジュから何らかの接触手段があったのなら。
「ミレースさんに頼めば、話はつけられると思う。だから、外に出たら旋風陣を頼れ。
連絡が付けられなかったとしても、あそこなら悪いようにはしないだろうし。」
「…ここに残る、というのはだめなのです?」
「そもそも『路地裏』自体、境遇が良い場所じゃないんだよ。それは忘れちゃいけない。
ラディはもっと自由でいられるんだ。世界の事をもっと知るためにも、ここに留まっているべきじゃない。そう僕は思うよ。」
再びの思考の間を空けて、ラディが答える。
「…セイルさんも、来てくれますよね…?」
「そうだな、僕は片付けないといけない事があるから、少し遅くなる。
けど追って行くよ。きっとね。」
「…わかり、ました。
明日、ツァイシーさんにつたえてきます。」
これまでで一番しょげてるラディを見るのは苦しかったが、路地裏に囚われているよりは、その方がいいと思ったのも事実。
自分の都合との境目がぐちゃぐちゃになってる中でも、それだけは確信を持てていた。




