30話 初志の道を⑧
路地裏の宿まで戻ってきて。
ラディの帰りは、いつもより遅かった。
その様子からして、ラディにとって良くない流れになっているのは明らかだった。
大体の察しはついている。
自分の行動、それによる鈍色仮面への影響。それに対する、ラディの考え方。
声をかけるのを躊躇った。けど、そんなラディが一番頼りにするのは、多分僕だ。
「…大丈夫か?」
迷った中で、かけた言葉はそれだった。それに対し、ラディの方も言い辛そうに答える。
「…分から、ないです。」
「止められなかった、か。」
「はい。赤霧の鎧の、直接的におおきな被害があったとの事で。
それで、反撃だというふんいきが、もうどうしようもなく……。」
意図した通りの結果。ではあるんだけど、今に関してだけは……。
「ツァイシーにも無理だったのか?」
「はい。
それで、ツァイシーさんは『ラディは降りた方がいい』って言ってて。」
「…そんな簡単にできる事なのか?」
「元々、路地裏のひとの為の組織、との事で。
あぶないからと外されるひととか、現場を見てやめたくてやめたひととか、過去にけっこういるみたいです。
それに、ツァイシーさんはラディを誘ったひとだから、ひときわ思うとこがあるみたいで。」
そう聞くと、気持ちは分からなくもない。
なら、いっそ合わせる形で。
「じゃあさ、エンの所とか…頼れないかな?」
「エンさんの…?」
「ほら、エン自身もだけど、その周りの人たちもラディの味方になってくれると思うよ。ラディの扱いの事、いい感じにしてくれたじゃん。
だから、もしかしたらラディの事も迎え入れてくれるんじゃないか?」
咄嗟の思い付きのまま言ったが、言いながら自分でもいけそうな案に思えた。
それに、エンの居る場所は確か上層。それなら、下層のごたごたからは遠く離す事ができる。




