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(9)秘密にしてくれと言われたらどうしたらいいですか

申し訳ありません。一話飛ばして載せてしまいました。

変更しております。



 冒険者たちは痙攣したまま立ち上がれずにいる。一刻を争う状況だ。ザックはその中の一人が持っている短剣を抜くと、その剣でコカトリスの心臓を突いた。溢れ出てくる血を手ですくうと、冒険者たちの口に少量入れる。コカトリスの新鮮な血液には解毒作用があるのだ。そして、血のついた短剣を冒険者の手に握らせると、自分の口の周りにも血をつけ、意識を失ったふりをした。


『自分も毒霧を吸って倒れてしまったけど、冒険者の短剣が運よくコカトリスを倒してその血が口に入って助かったと言い張りましょう。』


 黒い箱はザックにそうアドバイスをした。


「しかし、流石に偶然がすぎないか?」


 誰が新人冒険者がコカトリスを倒したなんて信じるというのだ。


『人の人生など奇跡の連続なのです。私は見たのだ、と主張しましょう。』



 しばらくザックがそのまま倒れたふりをしていると、うめき声が聞こえてきた。


「うう……み、みんな、大丈夫か?」

「あ、ああ。まだ体が痺れている気がするけど。」


 コカトリスの血の解毒作用が効いてきたらしい。そのうち、一人が驚いた声を出した。


「コカトリスが倒れているぞ!」

「俺たちはコカトリスの毒にやられたのか。誰が倒したんだ?」

「そういえば、ザックさんは?」

「あそこに倒れている!」


 慌ててやってきた冒険者がザックの上半身を助け起こす。それで気がついたふりをして、ザックは弱々しく目を開けた。


「ああ、みなさん……。助けてくださってありがとうございます。」


 冒険者たちは戸惑ったような顔をしている。それはそうだろう。自分たちがやった覚えはないのだから。しかし、ザックはさらに付け加えた。


「私も毒霧に巻かれ、動けなくなってしまいました。しかし、どなたかの短剣が、蛇の尻尾を切り落とし、心臓を貫いたのです。あなた方は命の恩人です……。」

「短剣?」


 短剣を握っていた冒険者がハッと自分の剣をみる。そこには確かにコカトリスの血がべっとりとついていた。


「お、俺、コカトリスを倒したのか?」


 流石にそれに答えられるほどザックは嘘に慣れていなかった。その代わりに辛そうに目を閉じて見せる。


「大変だ!ザックさんが死んでしまう。急いで山を降りよう」

「ザックさん、私たちが村まで連れて行きますから、それまで頑張ってくださいね。」


 そういうと、誰かがザックをおぶってくれた。ただ、それほど体力がないのか、少し降りていくと、息が荒くなってきた。情けない。


「くそう……重いな……」


 弱々しい声も聞こえてきた。仕方なくザックは、ちょっと良くなった風に目を開けてみせた。


「私はなぜこんなところに……」

「ザックさん、気づいたのか?」

「え、ええ。おろしていただけますか?」


 背中から降りると、ザックは地面に座り込んだ。突然具合が良くなっても怪しまれるかもしれない。


「少し休んだら、歩けそうです。」

「そうか?じゃあ、俺たちも少し休むとするか。」


 その一言で、ザックをおぶっていた冒険者はその場に座りこんだ。


「助かった……」


 よっぽど疲れていたらしい。この程度で疲れていては、魔物から逃げ出す時に、仲間を置いてくる羽目になるじゃないかとザックは思ったが、声には出さなかった。


「ちょっと……」


 冒険者たちはなにやら集まって、ヒソヒソと話し始めた。


「コカトリス……」

「でもザックさんの警告を……」


 ザックには彼らの話し合いの内容に、見当がついていた。黒い箱が教えてくれたのだ。


『彼らはおそらくコカトリスのことを隠そうとするでしょう。なぜなら、講師であるザックさんの言うことを聞かずに無謀な歩き方をした。そのことがバレてしまうからです。もし黙っていてくれと言われたら、『命の恩人だから…』と言って、聞いてあげましょう。これでコカトリスの件が表に出ることはありません。』


 しばらくすると、ザックの前に、冒険者たちが整列した。そのままぐいっと頭を下げる。


「言うことを聞かず、危険な目に遭わせてしまい、すみませんでした!」

「すみませんでした!」


 全員が唱和するのをザックは驚いた顔をして聞く。その後、リーダーがおずおずとザックに聞いてきた。


「その、今回コカトリスには出くわさなかった。そう言うことにしてもらいたいのですが。」


 黒い箱の言った通りになった。ザックは頷く。


「もちろんですとも。あなた方は命の恩人ですからね。」


 冒険者たちの顔がパッと明るくなった。


「今日、山歩きができなかった分は、今度また教えていただけますか?」

「今度はちゃんと話を聞きますから!」


 これからこの国を守っていくのは自分ではなく彼らなのだ。

それを思うと、ザックは断ることができないのだった。


読んでくださり、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
シラを切るのには成功したようですが、コカトリス、誰が倒した事になったんでしょう? 新人冒険者達はザックがこっそり解毒してあげたのかしら。私何か見落としていたらすみません……
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