(10) 冒険者ギルドにバレました。どうしたらいいですか
申し訳ありません。
一話どころではなく二話も飛ばしていました。
本日二話分更新します。明日はお休みさせてください。
コカトリス騒動の次の日。ザックは毒霧にやられて調子が悪いと家にいた。
「あまりにも元気すぎると疑われます。今日一日は家の中で過ごしましょう。誰かが来たら、寝台へ潜り込んで寝ていた風を装いましょう。」
相棒のアドバイスだ。一日くらい惰眠を貪っても問題はないはずだ。
そう思ってザックはゴロゴロしていたのだが。
「ザックさん、すみませーん。冒険者ギルドの者です」
外から声がした。なぜギルドの職員がここに来る?まさかコカトリスの件がバレたのか?
「ザックさーん。あれ、まさか昨日の毒で倒れて……」
このまま無視をしていたら、扉を壊してでも入ってきそうだ。慌ててザックは扉を開けた。
髪はボサボサ。寝間着の状態だ。職員はザックの様子をじっと見てからニコッと笑った。
「ご無事なようで何よりです。実は昨日の冒険者からとんでもない話が出たので、確認に参りました。入ってもよろしいですか?なるべく短く済ませますので!」
断る理由も見つからないし、ここで話せば村のみんなに知られてしまう。ザックは仕方なく家に招き入れることにした。
ザックが白湯でも出そうとすると、職員が止めた。
「あ、お構いなく。ザックさんも辛そうですからね。」
「申し訳ない。よければ寝台で横になってもいいですか?」
「もちろんですとも!」
職員がどうぞどうぞと勧めてくるので、ザックはもう一度寝台に潜り込んだ。
「実はですね。冒険者の一人が『俺はコカトリスを倒した』と言うんですよ。」
口の軽いやつだ。ザックは心の中で罵ったが、顔には出さない。
「申し訳ありません。実は……」
「聞いてます聞いてます。口止めされたんですよね?」
職員は申し訳なさそうに言う。ザックはそれに頷いた。
「その、彼らが私の言うことを聞かずに先に行ってしまったんです。慌てて追いかけたら毒霧に巻かれてしまい、それ以降のことは私にもわからないのです。」
職員はうんうんと頷いた。
「講師をお願いしておきながら、その言うことを聞かない冒険者はペナルティーを課されて然るべきです。しかし、コカトリスを倒したというと、ちょっとそのまま捨て置くわけにもいかないのです。しかも討伐した証拠すら持っていません。どうするべきかとギルドでも問題になりましてね。」
ザックは黙って聞いていた。それはそうだろう。あれは新人が倒せるような魔物じゃない。が、それを知っていることは知られてはならない。
「本当にコカトリスがいたのか、私が見てくると言うことになりまして。そこまでの道案内をお願いしたいのです。」
職員はそこまで喋ると、机の上に小さな瓶をコトリ、とおいた。
「具合が悪いと冒険者たちにも聞いていました。これ、中級ポーションです。」
中級ポーションは疲労感も癒してくれる、有能なポーションだ。毒に巻かれて具合が悪いザックに適したポーションである。高いから普通は飲まないけれども。
「こんな高いもの、飲めませんよ」
「いえいえ。ギルドとしても昨日から迷惑をかけっぱなしですので。迷惑料だと思って収めてください。」
押し問答の末、仕方なくザックは中級ポーションを飲んだ。仮病なのにもったいないが、飲むフリをしてもバレてしまう。
「……着替えをしたいので、しばらく外で待っていてもらえませんか?」
寝間着のままで外に出るのはザックといえども嫌だ。職員が快く外に出ていくと、ザックは黒い箱に小さな声で話しかけた。
「おい、相棒。大変だ。コカトリスを倒したのが冒険者ギルドにバレた!」
黒い箱は光りはじめた。
「それは大ピンチですね。自分がコカトリスを倒したかもと思ったら、どうしても自慢したくなる気持ちはわかります。あなたが倒したと思われないためにも、何も見ていなかったとシラを切り通しましょう。」
「コカトリスの死体を見たいそうだ。今から一緒に山に行くことになった。」
「道がわからないフリをするのは怪しまれて得策ではありません。昨日の毒霧の苦しさを思い出して、足がすくんで動けないふりを装いましょう。これ以上は近づけない、といえば、職員も納得してくれるかもしれません。」
確かに、ただの村人としてはここで怖がるのが普通だろう。ザックは大きく頷いた。
「なるほど。その手で行こう。」
着替えを済ませたザックは職員と一緒に山を登っていた。
「この山には魔物が多いのですか?」
「最近増えているように思います。この前はゴブリンが集落を作っていましたし。」
「そういえばそうでしたね。やはり隣国から魔物がこちらに渡ってきてしまっているのでしょう。」
職員の言葉が気になったので、ザックは思わず質問した。
「隣国から魔物が来ているのですか?」
「ええ。国境と言っても山や森の中には壁があるわけではないですから。
そこから魔物が少しずつ増えていると国から報告が来ています。なんでも、勇者が行方不明になってから、魔物討伐が進まなくなったとか。」
やはり、魔物を倒せるだけの者がいなくなってしまったらしい。ザックが沈黙していると、職員は明るい声で言う。
「そもそも勇者にばかり頼るのが悪いのです。ですから私どもの冒険者ギルドでは、冒険者を鍛えようとしています。一人では無理でも、大勢いたらなんとかなるでしょう。」
「そう、できるといいですね。」
ザックは辺りを見回して止まった。この辺でいいか。
「どうしました?ザックさん。」
後ろを歩いていた職員が訝しげに尋ねてくる。ザックは泣きそうな顔を作って、後ろを振り向いた。
「こ、怖くてこれ以上先に進めません……」
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